身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「では……そのように……」

 ペコッと頭を下げると同時に腹をくくった。

 もう。これだからお見合いっていういやつは。
 親や仲人やら顔を立てなきゃならないのが一番大変だ。

 まあ今回については、引き受けた時点で私も責任はあるから仕方ない……。

 私はどうにか気持ちを切り替え、オムライスにスプーンを入れる。
 大きく開けた口に放り込んだ直後、成さんがニコッと口角を上げた。

「そうと決まれば、今日ご両親はご在宅ですか?」

 私は首を傾げつつ、口の中のものがなくなってから答えた。

「両親……ですか? 家を出るときにはいましたけど」
「そうですか。では、のちほど連絡を入れていただいてもいいですか?」
「はい?」

 思わず眉根を寄せて、渋い顔で聞き返してしまった。それでも成さんは、相変わらずにこやかだ。

「挨拶に行かせてください。初めにきちんと説明しておいたほうが、後々面倒もないでしょうから」
「挨拶……!?」

 またもや驚かされる。もう彼が言い出すものは私の常識など通用しない。
 唖然としてぐるぐると考えを巡らせる。

 親に挨拶って。三か月間、恋人になりますって? そんな報告ってあり?

 ……でもよくよく考えたら、これから最長で三か月は頻繁に会う可能性があるのなら、両親が勘違いしてしまうかもしれない。
 本当の恋人になったと誤解されれば、雨降って地固まるだと言わんばかりに浮かれ始めそう。それは困る。

 私は内心渋々だったが、成さんの要望を受け入れた。

「わかりました。家に電話してみます」

 突如、成さんが私の右手首を握る。
 驚いて彼を見たら、眉尻を下げて笑いかけてきた。

「食事が終わったあとでいいです。せっかくだし、美味しいうちに食べましょう」

 成さんの気遣いで、私はスマホを取ろうとして手にしたバッグを戻し、まだ辛うじて温かいオムライスを食べ始めた。
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