身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「それで、今日はどのような用件で……?」

 父が口火を切ると、たちまち緊張が高まる。

 母は興味津々な目で私と成さんを交互に見てくる。
 私は堪らず、目線をお茶に落とした。

「はい。今回、私たちは急なお見合いでしたし、梓さんのご両親へ先にご報告をすべきと思いまして」
「報告……ですか?」

 父が訝しそうに尋ねる。

 この後の成さんからの話を聞いたら卒倒しちゃうんじゃないか心配だ。
 といっても、そもそも私をお見合いに行かせたのは父。驚いたって反対はしないはず。

「私たち、本日から三か月の間、お互いをより詳しく知るべく交際してみようと決めました。つきましては、現段階で期限付きではありますが、交際をお許しいただけませんでしょうか」

 突然成さんが頭を下げるものだから、父はもちろん母までもが驚愕していた。
 両親が唖然としている間も、成さんは旋毛を見せたまま動かない。

「いやいや、許すもなにも……」

 父は私の意思を確認したかったのか、ちらりとこちらを見た。
 私が一度こくりと頷くと、父は一拍置いて続ける。

「お見合いをした時点で……ほら、交際を許すようなものだから……なあ?」

 そうして、母へバトンを回す。母は、父よりも早く動揺を立て直していたようで、にっこり笑った。

「そうですよ。こちらこそ、不束者の娘ですがよろしくお願いしますね」

 母の畏まった挨拶にぎくりとした。
 後戻りできない状況にならないための挨拶なのだ。

 私は慌てて口を挟む。

「いや、ただ少しお付き合いしてみるってだけで」
「ご快諾心より感謝いたします。実は報告だけでなく、ひとつご相談もあるのですが」

 その矢先、成さんが発言してきて、思わず茫然とする。
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