身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 両親への報告を終えると、成さんは長居をせずに席を立った。
 玄関での別れ際に、「駅まで送ってくる」と口実を言って彼と家を出た。

 両親が見ていないのを確認してから、すぐさま彼を問い詰める。

「さっきのはなんですか! 私、聞いてません!」

 結構な剣幕で捲し立てたのに、成さんは怯みもせずに苦笑いを浮かべるくらい。

「ごめん。でも手っ取り早いでしょう?」
「手っ取り早いって……強引すぎます!」

 どういうこと? 効率重視なの?
 だとしても、相手の了承を得ないで勝手に決めるなんて。

 憤慨していると、彼は私の前に回り込んできて足止めさせる。

 不満な気持ちでいる私は、彼にじとっとした視線を向けた。
 しかし、彼はやはり動じず、むしろ堂々としている。

 なんだか悔しい思いになったとき、彼が言った。

「強引にもなるよ。三か月しかないんだから」

 僅かに口角を上げる彼を見て確信する。

 期間限定の提案をしてきたときに、ちらっと思った。

 成さんって、単に優しいだけじゃない。邪気のない笑顔で自分に有利になるよう働きかけてる。
 もしかして、とんでもない策略家かも……。

 たじろぐ私に、彼はダメ押しかのごとく莞爾として笑った。

「俺も必死なんだ。決められた時間で君には俺のこと好きになってもらわなきゃならないからね」

 仮面が剥がれた――。

 私の記憶が合っていれば、成さんはお見合いの日、自分を『俺』と呼んでいなかった。

 あの場はかしこまった席だったからそうしていたとは想像に容易い。が、このタイミングで口調も返られたら、妙な緊張感が走る。

 お見合いからさっきのデートまでは余所行きの仮面をつけてたんだ。

 本当の鷹藤成を前にして、頭の中がごちゃごちゃだ。
 とにかく、こんな流れでこの人と一緒に生活するなんて無理だよ。

< 34 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop