身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 夕方以降、ずっと自分の部屋にこもっていた。

 成さんの一挙一動に振り回されてる。

 どうしてこうなっちゃったんだっけ?
 落ち着いて考えれば、いくらでも回避できたポイントはあったのに。

「ああ~」

 もどかしい思いが口から零れ落ちる。

 枕に突っ伏していたら、デスクから着信音が聞こえてきた。
 私はビクッとして起き上がり、恐る恐るスマホに手を伸ばす。

 まさか、まだなにか言われるんじゃ……。

 着信主は、てっきり成さんだと思い込んでいた。
 しかし、ディスプレイを見て拍子抜けした。

 表示されている文字は【非通知設定】だ。

 ひとまず成さんではないと思ってほっとしたものの、相手が誰だかわからない電話に別の警戒心を抱く。

 これって、おそらく前も電話をかけてきた相手かも……。

 成さんとのお見合いの日。
 自宅に戻るタクシーの中で、今と同じく非通知設定から着信があった。

 実際、着信が来ていたときは、マナーモードだったのと車の振動とで気づかなかった。
 帰宅したあとに気づき、心当たりがなくて不審に思っていた。

 正体がわからなくてモヤモヤしていたのだけれど……。

 おそらく同一人物と感じ、私は意を決して応答ボタンに人差し指を触れた。

「……はい?」
《あっ……。梓ちゃん?》

 怖々スピーカーに当てていた耳に入ってきた声は、可愛らしいものだった。

 私は声の主の記憶を辿り、閃く。
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