身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「だったら……どうするの? ずっとはビジネスホテルにいられないでしょ?」
つい前のめりになって、矢継ぎ早に質問を投げかける。
《そうだよね……》
「お見合いがあったから家を出たんだよね? それならもう」
《そう! 電話したのはその話をしたかったの! 梓ちゃんにお詫びしなきゃって。私のせいで梓ちゃんがお見合いに行ったのよね? 本当にごめんなさい》
言下に謝られて戸惑いを隠せない。
「どうして知って……?」
だって、お見合い話がごたついているときは、当然友恵ちゃんの失踪が原因だったわけで、私が代わりに行くと決まったのは彼女がいなくなってからのこと。
疑問に思って彼女の答えを待つ。
《お見合いの件は嫌って言うほど聞かされてたから日時も場所も覚えてた。だから当日、今頃お父さんはどうしてるかしらって考えてたの》
友恵ちゃんはぽつぽつと弱々しい声で順に説明をする。
《そのうち、落ち着かなくて居てもたっても居られなくなって。中止になった事実を見れば安心できるだろうって、ホテルに忍び込んだの。さりげなくフロントに確認したら、予約がそのままでびっくりして……》
「じゃあ、あの日近くにいたの?」
《……うん。そうしたら梓ちゃんがいて、さらに驚いて。お父さんならやりかねないって思ったら申し訳なくなって。両親の前に姿を現すべきだってわかってはいたけど足が竦んで……梓ちゃんにすら声をかけられなくて》
「そっか……」
友恵ちゃんじゃなくても、一度逃げてしまったお見合いの席に、ひとりで顔を出すって勇気がいると思う。
両親の前に出ることさえ怖いのに、鷹藤家も揃っていたのだ。
気の弱そうな友恵ちゃんにはどう考えても無理な話。
《ごめんなさい……本当に、ごめんなさい》
友恵ちゃんは声を萎ませ、本当に申し訳なさそうに何度も謝った。
私は彼女に対して怒りの感情を抱いていない。
だから、涙声を聞くと胸が痛くなる。
「いいよ。そう何度も謝らないでよ」
《だって》
「正直『なんで私が』って思って反抗もしたんだよ。でもそれって、友恵ちゃんも同じ気持ちだったよね」
前にお見合いの話をちらっと聞いたとき、軽い気持ちで『大変だなあ』って思っただけだった。
いざ自分の身に降りかかってきて、友恵ちゃんがどれだけプレッシャーで、不安で苦しかったか。今ならわかる。
「幸い私には彼氏いないし。伯父さんもさすがに私相手に、これ以上無理強いはできないでしょ。これでよかったんだよ」
私が明るく言うと、逆効果だったのか耳元で鼻をすする音がした。
《梓ちゃん……ごめんなさい。私どうしたら……》
そのとき、コンコン、とノックの音が割り込んできた。
つい前のめりになって、矢継ぎ早に質問を投げかける。
《そうだよね……》
「お見合いがあったから家を出たんだよね? それならもう」
《そう! 電話したのはその話をしたかったの! 梓ちゃんにお詫びしなきゃって。私のせいで梓ちゃんがお見合いに行ったのよね? 本当にごめんなさい》
言下に謝られて戸惑いを隠せない。
「どうして知って……?」
だって、お見合い話がごたついているときは、当然友恵ちゃんの失踪が原因だったわけで、私が代わりに行くと決まったのは彼女がいなくなってからのこと。
疑問に思って彼女の答えを待つ。
《お見合いの件は嫌って言うほど聞かされてたから日時も場所も覚えてた。だから当日、今頃お父さんはどうしてるかしらって考えてたの》
友恵ちゃんはぽつぽつと弱々しい声で順に説明をする。
《そのうち、落ち着かなくて居てもたっても居られなくなって。中止になった事実を見れば安心できるだろうって、ホテルに忍び込んだの。さりげなくフロントに確認したら、予約がそのままでびっくりして……》
「じゃあ、あの日近くにいたの?」
《……うん。そうしたら梓ちゃんがいて、さらに驚いて。お父さんならやりかねないって思ったら申し訳なくなって。両親の前に姿を現すべきだってわかってはいたけど足が竦んで……梓ちゃんにすら声をかけられなくて》
「そっか……」
友恵ちゃんじゃなくても、一度逃げてしまったお見合いの席に、ひとりで顔を出すって勇気がいると思う。
両親の前に出ることさえ怖いのに、鷹藤家も揃っていたのだ。
気の弱そうな友恵ちゃんにはどう考えても無理な話。
《ごめんなさい……本当に、ごめんなさい》
友恵ちゃんは声を萎ませ、本当に申し訳なさそうに何度も謝った。
私は彼女に対して怒りの感情を抱いていない。
だから、涙声を聞くと胸が痛くなる。
「いいよ。そう何度も謝らないでよ」
《だって》
「正直『なんで私が』って思って反抗もしたんだよ。でもそれって、友恵ちゃんも同じ気持ちだったよね」
前にお見合いの話をちらっと聞いたとき、軽い気持ちで『大変だなあ』って思っただけだった。
いざ自分の身に降りかかってきて、友恵ちゃんがどれだけプレッシャーで、不安で苦しかったか。今ならわかる。
「幸い私には彼氏いないし。伯父さんもさすがに私相手に、これ以上無理強いはできないでしょ。これでよかったんだよ」
私が明るく言うと、逆効果だったのか耳元で鼻をすする音がした。
《梓ちゃん……ごめんなさい。私どうしたら……》
そのとき、コンコン、とノックの音が割り込んできた。