身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
どうにか口を開き、強がって見せる。
「な、成さんでもふざけたりするんですね」
冗談交じりに言って笑っても、彼は一貫して真剣な表情を崩さない。
こちらに熱い眼差しを向け続けている。
「まさか遊びで言ってると思ってる?」
「え……」
「契約はどうあれ、今は恋人だろう? 〝彼女〟に誘われたら当然それに乗る」
「さっ、誘ってなんか」
成さんの発言に、カアッと身体が熱くなる。
堪らず顔を背けた途端、彼の大きな手でクイッと戻された。
「そう? だとしたらこれを機に自覚してもらわないと」
刹那、目前の彼が長い睫毛を伏せていく。私は反射的に瞼をきつく閉じた。
同様に唇もぎゅっと引き結ぶ。
次の瞬間、ちゅっと額にキスされた。
……口づけられるかと思った。
結果的に彼の行動は想像とは違ったものの、安堵する余裕はなくいろんな感情が入り混じる。
額に手を添え、そろりと彼に目を向けると、ニッと口の端を上げて意地悪そうに笑みを浮かべていた。
「次は止められないよ、梓」
「なっ……」
成さんはくすくすと笑いをこぼし、私から離れる。
私はすぐさま起き上がって、態勢を整えた。
……が、簡単に落ち着きを取り戻すことは叶わない。
キスされるって思い込んだ自分が恥ずかしい。
だけど、実際キスはおでこにされたわけで、彼の唇の感触は未だに残っている。
しかも、『次は』って。
そんなの、これからずっと意識し続けちゃうじゃない。
ドクドクと騒ぐ胸を両手で押さえ、密かに彼に視線を送る。
再び本を捲り始めていた成さんは、私を一瞥してニコッと目尻を下げた。
些細なサインですらも、私は翻弄されてしまう。
この関係はプラトニックだなんて、大いに油断していた。あんなふうに鮮やかに迫られてやっと、自分の置かれた状況を顧みる。
いくら彼の印象が紳士的なものだったからといって、本性はわからない。
実はイメージとは違う部分を秘めている可能性は十分ある。
普通に考えれば男の人と一緒に暮らすってリスクを伴うのに。
私……残りの期間を、無事に乗り切れるんだろうか。
昨夜はあんなことがあった後でも同じベッドで眠らなきゃいけなくて、ものすごく緊張した。が、成さんは全然気にしていない様子で、なんら変わらぬ態度のままあっさりと眠りに就いていた。
私はといえば、反転した視界に映し出された精悍な顔つきの成さんがずっと頭から離れず。
触れられた頬や額にも感触が残っている気がして落ち着かなかった。
さらには、彼が低く色っぽい声でささやいたひとことが、耳にこびりついて離れてくれなかった。
『梓』――と。
「な、成さんでもふざけたりするんですね」
冗談交じりに言って笑っても、彼は一貫して真剣な表情を崩さない。
こちらに熱い眼差しを向け続けている。
「まさか遊びで言ってると思ってる?」
「え……」
「契約はどうあれ、今は恋人だろう? 〝彼女〟に誘われたら当然それに乗る」
「さっ、誘ってなんか」
成さんの発言に、カアッと身体が熱くなる。
堪らず顔を背けた途端、彼の大きな手でクイッと戻された。
「そう? だとしたらこれを機に自覚してもらわないと」
刹那、目前の彼が長い睫毛を伏せていく。私は反射的に瞼をきつく閉じた。
同様に唇もぎゅっと引き結ぶ。
次の瞬間、ちゅっと額にキスされた。
……口づけられるかと思った。
結果的に彼の行動は想像とは違ったものの、安堵する余裕はなくいろんな感情が入り混じる。
額に手を添え、そろりと彼に目を向けると、ニッと口の端を上げて意地悪そうに笑みを浮かべていた。
「次は止められないよ、梓」
「なっ……」
成さんはくすくすと笑いをこぼし、私から離れる。
私はすぐさま起き上がって、態勢を整えた。
……が、簡単に落ち着きを取り戻すことは叶わない。
キスされるって思い込んだ自分が恥ずかしい。
だけど、実際キスはおでこにされたわけで、彼の唇の感触は未だに残っている。
しかも、『次は』って。
そんなの、これからずっと意識し続けちゃうじゃない。
ドクドクと騒ぐ胸を両手で押さえ、密かに彼に視線を送る。
再び本を捲り始めていた成さんは、私を一瞥してニコッと目尻を下げた。
些細なサインですらも、私は翻弄されてしまう。
この関係はプラトニックだなんて、大いに油断していた。あんなふうに鮮やかに迫られてやっと、自分の置かれた状況を顧みる。
いくら彼の印象が紳士的なものだったからといって、本性はわからない。
実はイメージとは違う部分を秘めている可能性は十分ある。
普通に考えれば男の人と一緒に暮らすってリスクを伴うのに。
私……残りの期間を、無事に乗り切れるんだろうか。
昨夜はあんなことがあった後でも同じベッドで眠らなきゃいけなくて、ものすごく緊張した。が、成さんは全然気にしていない様子で、なんら変わらぬ態度のままあっさりと眠りに就いていた。
私はといえば、反転した視界に映し出された精悍な顔つきの成さんがずっと頭から離れず。
触れられた頬や額にも感触が残っている気がして落ち着かなかった。
さらには、彼が低く色っぽい声でささやいたひとことが、耳にこびりついて離れてくれなかった。
『梓』――と。