身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 車で観光地を巡っていくうち、あっという間に空が暗くなった。
 気温は一気に低くなり、ジャケットを羽織る。

「昼に見た紅葉でも思いましたが、すっかり秋なんだなって実感しますね」
「そうだね。そのジャケットだけじゃ寒いんじゃない?」
「大丈夫です。後半は屋内の観光が多かったので」

 たわいのない会話を重ねていたら、上品にライトアップされた一軒のレストランに到着した。

 大きな三角屋根の北欧テイストの建物。味があってとても素敵。

 車を降りた途端、さっきよりも格段に冷たくなった風が吹いて首を竦める。
 足早に入口へ向かうと、ドアのデザインも可愛らしくて思わず見入った。

 縦にラインのあるアンティークなミントグリーン。
 十字格子の小窓からオレンジ色の灯りが漏れ出ている。

 成さんがドアを引いてくれて、私は会釈をして先に足を踏み入れた。瞬間、暖炉独特の温かさに包まれ、無意識に張っていた肩の力が抜ける。

 高すぎない心地のいいドアチャイムの音と同時にドアが閉まり、成さんが隣にやってくる。

 入り口には数組待っている人がいるのもあって若干狭くなっていて、成さんとの距離が近い。
 私はちょっと肩が触れただけでドキッとする。

「あ……すごい賑わい……。もう満席かもしれませんね」

 平静を装いつつ話しかける。すると、成さんはニコッと笑って言った。

「ここ、昔から馴染みの店で個室を予約しておいてあるから大丈夫だよ。少し待とう」

 ちょうど店のスタッフの手が空いていないタイミングみたいだ。
 こちらを気にする素振りはチラチラ窺えるが、会釈をされるだけでエスコートされるまでには至らない。

 私は邪魔にならないよう隅に寄って、店内を眺める。

 ヴィンテージインテリアが映えるモダンな店内。
 成さんの別荘の雰囲気と似てるけれど、ここはレストランなので華やかさがある。
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