身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「お待たせ。今日は疲れたでしょ? もう休もうか」
「は、はい。そうですね」

 成さんはやっぱり自然な態度で、私だけ意識しすぎてるのがわかる。

 心を無にすればいいんだ。眠って明日の朝になって東京に戻れば、また日常に戻る。
 仕事に没頭していればなおさら余計なこと考える暇なくなるだろうし。

 寝る準備を淡々と済ませ、二階に上がる。

 部屋は三つあるけれど、ここでもルールは続行されてるはずだから、おそらく同室で休むはずだよね。

 割り切って成さんについていき、手前の部屋に入った。
 ベッドはセミダブルがふたつ。成さんの自宅よりは距離があって、内心ほっとする。

『次は止められない』と宣言されて以降、物理的に距離を取ってきたつもり。
 しかし、どうしても成さんのベッドでは手を伸ばせば届く近さになってしまって、毎晩ハラハラしていた。

 成さんが寝返りをするたびにベッドが僅かに振動して、そのたびドキドキする……そういったことは、今日はない。

「ベッドは梓さんの好きなほうを使っていいよ」
「えっ。じゃあ、奥側に行きますね」

 私はそう言ってベッドに移動し、腰を下ろした。すると、成さんはベッドサイドランプをつけて、部屋の照明を落とした。
 そして、私の横に座る。

 一気に緊張感が高まる。

 さらにこちら側に片手をついてスプリングが軋むのを感じては、ドクンと心臓が大きく脈打った。

 ベッドがふたつあるのに、こちらに座る理由なんてひとつ。

 私は咄嗟に固く目を瞑り、硬直した。
 ……が、予測していたアクションがなにひとつない。

 困惑状態でいたら、成さんが苦笑交じりに優しく言った。
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