身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 定時を迎え、オフィスを出る。

 お昼に数人の友人に声をかけてみたものの、みんな急だし都合がつかなかった。

 悩んだけれど、成さんのマンションにひとりでいたらまたいろいろと考え込んでしまいそうだから、ひとりででも行こうと決めた。

 新橋で地下鉄に乗り換えて、最寄駅に着いたのは六時頃。
 十月にもなると、すっかり陽は落ちてしまった。

 辺りの景色を眺めながら歩く。
 電球色に照らされたおしゃれなカフェに興味を惹かれ、無意識に店内に目を向けていた。

 すると、驚くことにその中に成さんらしき人を見つけ、思わず足を止めてしまった。

 そういえば、成さんの勤務先は日比谷だったはず。
 この辺りから近い。彼がいてもおかしくはない。

 素通りすればいいものを、私は咄嗟に近くにあった街路樹に身を潜め、こっそりと店内を窺っていた。
 そして、向かい合って座っていた女性が顔を上げた瞬間、私は目を剥いた。

 ――友恵ちゃん!

 私は思わぬ組み合わせを目の当たりにし、絶句する。

 次から次へと疑問が湧き出て、心臓がざわつく。
< 85 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop