身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 友恵ちゃんがなぜ成さんと……?
 もう自宅に戻ったの? それとも、まだ戻らないまま成さんに会いに……?

 なんにせよ、私になにも連絡はない。いったいどうなっているの?

 突如、友恵ちゃんが成さんに向かって頭を下げたのを見た。

 窓越しじゃ、当然なにを話しているかなんてわからない。

 気づけば息を止めていた。徐々に苦しくなって、深く息を吐く。

 夢中になってふたりを見て、数分は経っていた。

 成さんがなにかずっと話をしている様子だけど……。もしかして、友恵ちゃんを説得してたり? 元々のお見合い相手は友恵ちゃんだったし。

 勝手な想像をしてふたりを眺めていたら、だんだん居た堪れなくなってきた。

 もうやめよう、と顔を背ける直前に、成さんが笑っているのがわかった。
 友恵ちゃんのほうを見れば、彼女もまたさっきまでとは違って打ち解けた雰囲気を感じる。

 私はそんなふたりの姿を最後に、カフェから目を逸らして踵を返した。
 レストランへ行く予定だったのも忘れ、足早に来た道を戻る。

 全然わからない。
 ふたりがどうして会っていたのか。今日が初めてなのか、それとも何度もああして会っていたのか。

 どんな会話をして笑い合っていたのか、想像もつかない。

 友恵ちゃんは付き合っている相手がいるって言ってた。彼女が私に嘘をつくとは思えない。
 でも、成さんは?

 彼について、私は実際まだなにも知らないも同然。
 嘘をつけるような人なのか、真面目な人なのか……。私は、なにも……。

 駅の入り口が見えたところで、ぴたりと立ち止まる。

 別にふたりがどんな関係だって構わないはずじゃない。
 元々友恵ちゃんと成さんが出会うはずだったわけだし、そこに私は巻き込まれただけ。

 友恵ちゃんは私と違ってとても魅力的だから……直接会っていた今、成さんは友恵ちゃんのほうがよかったって思っているんじゃないかな。
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