身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 気付けば朝になっていて、隣を見ればすでに成さんの姿はなかった。

 ぎくしゃくした思いを抱えたまま、朝の支度を済ませて出社する。
 朝から何度かスマホを確認しているけれど、友恵ちゃんからの連絡はない。

 出社早々、ものすごい勢いで稲垣さんが私のもとにやってきた。

 息せき切ってくるものだから、目を丸くして尋ねる。

「ど、どうしたの……?」
「時雨さんっ。もー、なんで教えてくれなかったんですか!」

 私は話の内容が掴めず、首を傾げる。
 彼女はどこかにやけ顔でバッグを探っている。

 稲垣さんの表情から推測するに、悪い話ではなさそうだけど……。

 彼女が取り出したのは経済雑誌。

「経済雑誌なんて見てるの? すごいね」
「いえ! これは思わずもらっちゃったんです!」
「思わずもらった? どういうこと?」
「彼氏が買った雑誌なんですけど。えーと」

 話が読めず困っていたら、稲垣さんはいそいそとページを捲っている。数秒後、目的の箇所を見つけたらしく、見開きのページを見られた瞬間ぎょっとした。
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