身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「私の彼がなんか言ってたんですが、彼すごいんですね? えっと、確か業績の悪い取引先をいくつも立て直してきた……? とかなんとか」
稲垣さんの口から次々と語られる彼の情報は、まるで私の知る彼とは違っていて、どこか距離を感じる。
やっぱり、私の前の彼は造り物で、こうしてビジネスを成功させている輝かしい経歴を取り上げられる彼が本来の姿なのかもしれない。
「イケメンで仕事もできるなら、こうして大きく取り上げられるのも頷けますね。そして、つい忘れちゃうけど時雨さんは会長の孫娘なんですもんねー。相応の彼がいて当然かあ」
「……違うよ。鷹藤さんは……従姉妹と縁談の話があったみたいだから」
私は手にしていた雑誌をパタンと閉じて、稲垣さんに返した。
「えっ。そうなんですか?」
嘘は言ってない。むしろ、今の私と成さんの関係のほうが嘘だもの。
「時雨さんの従姉妹ってことは……確か、本社社長に娘さんいらっしゃいましたよね? 社長のご令嬢ですか? なるほど~。お似合いですね」
「だけど、この話はまだ……」
「あ! わかってますよ。こう見えて、口は堅い方なので!」
稲垣さんは、きゅっと口を引き結んで見せる。
私が苦笑してデスクに向かおうとすると、彼女が不思議そうな声を漏らした。
「あれ? でもじゃあ、なんで昨日は時雨さんと彼が一緒に?」
「私、従姉妹と仲がいいからよく会うの」
「ああ。つまり、三人だったんですね~。私、社長の娘さんの顔は知らないから気づかなかったのかな」
どうにかうまくごまかして、今度こそ席に着く。
周りに気づかれないように、重苦しい息を吐いた。
胸が軋む。
嘘を重ねてしまった罪悪感と、でも本来はそういう話だったのだから、と正当化する思いが交錯した。
やっぱりダメだ。
今夜、成さんとのことをきちっとして、家に戻ろう。
稲垣さんの口から次々と語られる彼の情報は、まるで私の知る彼とは違っていて、どこか距離を感じる。
やっぱり、私の前の彼は造り物で、こうしてビジネスを成功させている輝かしい経歴を取り上げられる彼が本来の姿なのかもしれない。
「イケメンで仕事もできるなら、こうして大きく取り上げられるのも頷けますね。そして、つい忘れちゃうけど時雨さんは会長の孫娘なんですもんねー。相応の彼がいて当然かあ」
「……違うよ。鷹藤さんは……従姉妹と縁談の話があったみたいだから」
私は手にしていた雑誌をパタンと閉じて、稲垣さんに返した。
「えっ。そうなんですか?」
嘘は言ってない。むしろ、今の私と成さんの関係のほうが嘘だもの。
「時雨さんの従姉妹ってことは……確か、本社社長に娘さんいらっしゃいましたよね? 社長のご令嬢ですか? なるほど~。お似合いですね」
「だけど、この話はまだ……」
「あ! わかってますよ。こう見えて、口は堅い方なので!」
稲垣さんは、きゅっと口を引き結んで見せる。
私が苦笑してデスクに向かおうとすると、彼女が不思議そうな声を漏らした。
「あれ? でもじゃあ、なんで昨日は時雨さんと彼が一緒に?」
「私、従姉妹と仲がいいからよく会うの」
「ああ。つまり、三人だったんですね~。私、社長の娘さんの顔は知らないから気づかなかったのかな」
どうにかうまくごまかして、今度こそ席に着く。
周りに気づかれないように、重苦しい息を吐いた。
胸が軋む。
嘘を重ねてしまった罪悪感と、でも本来はそういう話だったのだから、と正当化する思いが交錯した。
やっぱりダメだ。
今夜、成さんとのことをきちっとして、家に戻ろう。