身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
私はというと、気まずさのあまり、ふいっと目を逸らしてしまった。
「いいなあ、時雨さん。こんな素敵な人が親戚になるだなんて。羨ましい」
「……親戚に?」
「え? そうなりますよね? 時雨さんの従姉妹と鷹藤さんがご結婚したら」
成さんが訝しそうに尋ねると、稲垣さんはさらりと言って笑顔を振りまいた。
完全にアウト。言い逃れできない。
胸の奥がざわざわと嫌な心地に襲われる。
時間が流れていくのを黙って待つしかない、と下を向いていたら、とてもゆったりと丁寧な口調で成さんが答えた。
「ああ。なるほど。確かにそうなりますね。私が彼女の従姉妹と結婚した場合は……」
彼のやたら柔らかな声音が私を戦慄させる。
「今日は梓さんに相談があって来たんです。もしかして、タイミングが悪かったでしょうか?」
「いえ。私は時雨さんにここまでご一緒させていただいただけなので。じゃあ、私はこっちなので失礼します。お疲れ様でした~」
事情を知るはずのない稲垣さんは、私を置いて颯爽と帰っていった。
ふたりきりになって、しんと静まり返る。
なにを言えばいいの……? それよりもまず、顔すら上げられない。
俯いていたら、成さんが口を開く。
「車。近くに置いてあるから」
「は、はい……」
私はおずおずと成さんの後をついていく。
車に乗って向かうは、成さんのマンション。
車内ではお互いずっと沈黙で、重たい空気の中夜の街を駆けていった。
「いいなあ、時雨さん。こんな素敵な人が親戚になるだなんて。羨ましい」
「……親戚に?」
「え? そうなりますよね? 時雨さんの従姉妹と鷹藤さんがご結婚したら」
成さんが訝しそうに尋ねると、稲垣さんはさらりと言って笑顔を振りまいた。
完全にアウト。言い逃れできない。
胸の奥がざわざわと嫌な心地に襲われる。
時間が流れていくのを黙って待つしかない、と下を向いていたら、とてもゆったりと丁寧な口調で成さんが答えた。
「ああ。なるほど。確かにそうなりますね。私が彼女の従姉妹と結婚した場合は……」
彼のやたら柔らかな声音が私を戦慄させる。
「今日は梓さんに相談があって来たんです。もしかして、タイミングが悪かったでしょうか?」
「いえ。私は時雨さんにここまでご一緒させていただいただけなので。じゃあ、私はこっちなので失礼します。お疲れ様でした~」
事情を知るはずのない稲垣さんは、私を置いて颯爽と帰っていった。
ふたりきりになって、しんと静まり返る。
なにを言えばいいの……? それよりもまず、顔すら上げられない。
俯いていたら、成さんが口を開く。
「車。近くに置いてあるから」
「は、はい……」
私はおずおずと成さんの後をついていく。
車に乗って向かうは、成さんのマンション。
車内ではお互いずっと沈黙で、重たい空気の中夜の街を駆けていった。