身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「柔らかな感触と甘い味……可愛い声と色っぽい表情に、ますます夢中にさせられる」

 恥ずかしいことを言われてるのに、喜んでいる自分がいる。

 彼がまた私に影を落としてくるのをギリギリまで見つめ、鼻先が触れた瞬間、目を閉じる。
 ちゅっ、ちゅっと小鳥のように啄むキスを繰り返し、次第にまた、長く深い口づけに変わっていく。

 もう唇の感覚も麻痺しそうと思ったところで、成さんはささやいた。

「ねえ。好きでもない男にキスされたら、そんな表情にならないと思うんだけど」

 そうしてまたすぐ、唇を重ねる。

「ん……ッ」
「それとも、俺の都合のいい思い込み?」
「んう」
「ね、梓……」

 成さんはキスをしては、色気を含んだ声を落としを繰り返す。
 私は言葉も返せず、されるがまま。

 頬を上気させ、薄っすらと目を開けて成さんを見る。すると、そっと髪に指を挿し込まれ、眉を寄せて切なげに言われた。

「俺は好きでもない人に触れたりしない。触れたくない」
「だ……め」

 私の途切れ途切れの声に、成さんはピタッと手を止めた。

 もう私は、成さんの伝えてくれる言葉は全部信じてしまう。
 だからもし……もしも、単純に私の機嫌取りだけだったとしたら、今のうちにそう言ってほしい。

 私は両手で自分の顔を覆って、続きを口にする。

「本気に……しちゃう、から」

 刹那、彼は噛みつくようなキスをする。

 唇や舌と一緒に、お互いの感情も混ざり合ってる感覚がする。
 あまりに情熱的で、身体の奥まで熱くなっていくのを感じた。

「ふ、う……ッン」

 頭に添えられた手も、身体の重みも、絡ませ合う指も全部に陶酔する。

 成さんの吐息が耳に入るたび、身体の奥からなにかがせり上がってくるのがわかった。

「もっと……もっと、俺に本気になれよ」

 鋭い視線で求められ、胸がきゅうっと締めつけられる。
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