身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 軽く肌を掠めただけで、過剰な反応をしてしまう自分が恥ずかしい。

 どうしたらいいの?
 私……受け入れたのはいいけれど、初めてだって伝えてない。こういうのって、申告するべき?

 高揚する気持ちに比例して、焦りも大きくなっていく。
 涙目でちらりと成さんを見やれば、彼もまた、余裕のなさそうな熱視線を送ってきていた。

 そんな表情を目の当たりにして、身体の奥から甘く切ない感覚がせり上がってくる。

 怖いけど、やっぱり私……。

「な、成さん」

 成さんは私の瞼にキスを落とし、「ん?」と聞き返す。
 私は彼のシャツを握り、勇気を出して告白した。

「私……こういうの、初めて……で」
「……え?」

 明らかに彼は驚いていた。目を大きくして私を見下ろしている。

 言えばどんな反応があるか、まったく予想できなかった。こんなふうに固まられると知っていれば、黙っていたのに。

 男の人の気持ちはわからないけれど、経験のない女を相手にするって、重かったり面倒だったりするのかもしれない。

 不安で瞳を揺らしていたら、成さんがぽつりとつぶやいた。

「ごめん」

 謝罪の言葉に頭の中が真っ白になる。

 拒否されて恥ずかしくて、今すぐ彼の視界から消えてしまいたい。

 そう思った瞬間。
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