8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「……」

 オスニエルは、不思議に優しい気持ちになる。孤児は怯えたようにオスニエルを見るが、ぎこちなくでも笑って見せれば、ホッとしたような笑顔を返してくる。
 フィオナが作り上げた王国は、温かくオスニエルをも迎え入れるのだ。

 それだけじゃない。フィオナの作り出したものが、貴族たちにも受け入れられ、氷のスイーツは平民にも受け入れられる。

 貴族の多くはフィオナの顔も知らない。平民たちはアレがフィオナだと思ってもいない。それなのに、彼女はみんなから愛されている。

「……参ったな」

「え?」

 オスニエルは、動いている自分の気持ちを自覚せざるを得なかった。
 考えないように思ってもフィオナのことを思ってしまう。止めようとしても、彼女の作り出す流行は広まってしまう。
 なにより、彼女が作り出す安らげる空気は、きっと他の誰にも作れない。

「……フィオナ」

「はい?」

 なんてことをしてくれたんだ。居心地がいいと、隣にいたいと思ってしまうなんて。

「帰りは俺と馬で帰ろう」

「は?」

「いいから。犬は侍女に預けろ」

「ちょ、オスニエル様!」

 オスニエルはカイの馬を奪うと、前にフィオナを乗せて走り出した。カイは呆気にとられたようにポリーと顔を見合わせている。後ろからあわててロジャーが追いかけてくるが、オスニエルは彼をひと睨みし、スピードを上げて置き去りにした。今はただ、ふたりきりになりたかった。

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