8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 フィオナの宮に、オスニエルが手配した仕立て師が出入りするようになる。

「最高級の品を作るよう、仰せつかっております」

「……はあ」

 デザインは、すでにオスニエルが三パターンにまで絞っているらしい。フィオナに求められるのは、数々の三択に応えることと、採寸中おとなしくしていることだ。

「仮縫いができましたら、またご試着をお願いいたします」

 仕立て師は機嫌よく帰って行き、反してフィオナはどっと疲れていた。

「一体何なの……」

 先日の孤児院訪問から、オスニエルの態度が一変した。
 日に一度は挨拶にやってきて、お茶を飲んで帰って行く。
 その際に国事についても相談されるので、個人の意見ですが、と前置きし自分の考えを伝えると、オスニエルは満足して帰って行く。

 先日、彼の側近であるロジャーに会ったときも、「フィオナ様のおかげで、王子は国政に前向きになっております」となぜか褒めたたえられた。

「私が何をしたって言うの」

『お前は本当に鈍感だな』

 顔を押さえて呟けば、あきれたような声が聞こえてくる。ドルフだ。

「鈍感ってどういうこと?」

『態度が変わった理由なんて、考えればわかるはずなんだがな』

 ドルフは無理矢理膝の上に乗ってきて、くるりと丸くなる。

「くっ、かわいい……」

 子犬姿でそんな仕草をするなんてずるい。ときめいてしまうじゃないか。
 これがきっかけで、頭を占めていたオスニエルのことはポンと飛んで行ってしまった。
 フィオナがドルフを撫でていると、彼は彼で少し機嫌を直した様子だ。

『まあ、俺が教えてやる義理もない』

 ポソリとつぶやき、そのまま寝たふりをした。

< 102 / 158 >

この作品をシェア

pagetop