8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「以上、さまざまな疑惑が、ジェマ侯爵令嬢にはかけられております。これ以上は別室でお話したほうがよろしいかと」

「嘘。嘘よ! 離しなさい、無礼な!」

 捕らえられたジェマがじたばたと暴れるが、近衛兵が容赦なく連れていく。

「ロジャー様、リプトン侯爵が闇市でやり取りしていた人物を取り調べてまいりました。侯爵は黒ですね」

 緩い声でやってきたのはカイで、フィオナを見つけると、「フィオナ様、よくご無事で。良かったです。もうポリーが泣いて泣いて大変で」

「ポリーが?」

「責任を感じているようです。後宮におりますので、落ち着いたら顔を出してあげてください」

「……ありがとう、カイ。オスニエル様、私、行ってきます」

「まだ病み上がりだ。気をつけろ」

 オスニエルとしては、フィオナを離したくはなかったが仕方ない。彼女は自分の思う通りには動かないのだ。そしてそこに、オスニエルは惹かれたのだから。

「あ、トラヴィス。……私のこと、心配してくれたのはありがたいけれど、もう二度と、こんなことは辞めて。私は自分の意志でここにいるの。……オスニエル様のおそばにいたいの」

「フィオナ」

「……俺はフィオナを正妃にするつもりだ。お前が心配するようなことな何もない」

 ふたりに揃ってそう言われ、トラヴィスは苦笑して頭を下げた。

「私がしたことに対し、どんな罰も受けます。オスニエル殿下に置かれましては、どうか王太子妃といつまでもお幸せに」

「あたり前だ。お前に言われるまでもない。……連れていけ」

 そのまま、トラヴィスは牢へと連れていかれた。
 彼自身全く罪を負わないことはなかったが、ジェマ嬢の行動についての証言が認められ、三年間の投獄ののち、国外追放という形で刑が執行された。それはまた後の話だ。

 フィオナは後宮に戻り、ポリーに無事な姿を見せた。

「うあああん、フィオナ様、よかったぁ」

 大泣きのポリーは、それからしばらくフィオナの傍から一秒たりとも離れず、オスニエルから嫌がられた。
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