8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
数日後、オスニエルは、城の応接室でお茶をすすっていた。リプトン侯爵から呼び出され、なにかと思って応接室に向かえば、なぜだかいたのはジェマ嬢だった。
「オスニエル様、今度の国王様の生誕祭にはぜひ私と」
ジェマ嬢は確かに正妃候補の筆頭だが、こうして結婚する前から何度も仕事の邪魔をしに来られると、さすがに辟易してくる。彼はだんだん嫌気がさしてきていた。
「生誕祭には妻を同行させる」
「フィオナ妃は側妃ですわ。こういった公式行事には出席なさらないでしょう?」
「だが現在、私の妻はフィオナひとりだ。妻ではない女性をエスコートする方がおかしいだろう?」
「では婚約者であればどうです? 婚儀は一年後まで待ちます。早めに婚約だけでも……」
ダン! と激しい音が空気を割った。オスニエルが机を叩いたのだ。
ジェマは驚いて身を引き、彼をじっと眺める。苛立っている彼の横顔は、まるで戦場にいるときのように険しい。
「お、オスニエル様」
「君の気にすることはそれだけなのか? 国王の生誕祭など、ただの年中行事だ。しかもふた月も先のな」
「ですが、新しいドレスを仕立てようと思えば遅いくらいで……」
「生誕祭はフィオナを連れていく。この話はこれで終わりだ。侯爵に、執務中の俺に娘の相手をさせるなと強く言っておけ!」
ぴしゃりと言い放ち、オスニエルは部屋を出る。後ろで控えていたロジャーは苦笑しながら後に続く。
「フィオナ様にドレスをプレゼントしてはいかがですか」
「なんで俺が!」
「生誕祭にエスコートなさるのでしょう?」
「あれは言葉の綾だ」
とはいえ、オスニエルの頭の中には、フィオナの婚儀のときの姿が思い浮かぶ。
(あれは、美しかったな)
気が付くと、ニヤニヤと笑ったロジャーの顔がすぐ近くにある。
「うわっ、何だ、ロジャー!」
「オスニエル様がにやけておられるから」
「そんなことはない!」
そのまま、オスニエルは肩をいからせて行ってしまう。
「あーあ。素直になればいいのに」
ロジャーはほほ笑んだまま、彼の後を追った。
「オスニエル様、今度の国王様の生誕祭にはぜひ私と」
ジェマ嬢は確かに正妃候補の筆頭だが、こうして結婚する前から何度も仕事の邪魔をしに来られると、さすがに辟易してくる。彼はだんだん嫌気がさしてきていた。
「生誕祭には妻を同行させる」
「フィオナ妃は側妃ですわ。こういった公式行事には出席なさらないでしょう?」
「だが現在、私の妻はフィオナひとりだ。妻ではない女性をエスコートする方がおかしいだろう?」
「では婚約者であればどうです? 婚儀は一年後まで待ちます。早めに婚約だけでも……」
ダン! と激しい音が空気を割った。オスニエルが机を叩いたのだ。
ジェマは驚いて身を引き、彼をじっと眺める。苛立っている彼の横顔は、まるで戦場にいるときのように険しい。
「お、オスニエル様」
「君の気にすることはそれだけなのか? 国王の生誕祭など、ただの年中行事だ。しかもふた月も先のな」
「ですが、新しいドレスを仕立てようと思えば遅いくらいで……」
「生誕祭はフィオナを連れていく。この話はこれで終わりだ。侯爵に、執務中の俺に娘の相手をさせるなと強く言っておけ!」
ぴしゃりと言い放ち、オスニエルは部屋を出る。後ろで控えていたロジャーは苦笑しながら後に続く。
「フィオナ様にドレスをプレゼントしてはいかがですか」
「なんで俺が!」
「生誕祭にエスコートなさるのでしょう?」
「あれは言葉の綾だ」
とはいえ、オスニエルの頭の中には、フィオナの婚儀のときの姿が思い浮かぶ。
(あれは、美しかったな)
気が付くと、ニヤニヤと笑ったロジャーの顔がすぐ近くにある。
「うわっ、何だ、ロジャー!」
「オスニエル様がにやけておられるから」
「そんなことはない!」
そのまま、オスニエルは肩をいからせて行ってしまう。
「あーあ。素直になればいいのに」
ロジャーはほほ笑んだまま、彼の後を追った。