FUZZY
私の呼びかけに顔をパッと上げてきょろきょろあたりを見渡す。やっぱり碧生くんだ。
視界に私を捕らえたら口をへの字にしてうるうるとした瞳でこちらへと歩いてくる。
久しぶりのこの感じ。
わんこが歩いてる、大きなわんこが。
動けずにいる私を見下ろす表情は全然元気がなくて、泣き腫らしたみたいに目が赤い。泣きたいのはこっちだ。でも、碧生くんも泣きたい理由があったんだよね…。
「……理乃さん」
「……うん」
「ライン、全部、無視した」
「……うん」
「悲しかったよ、俺」
「私だって悲しかった」
「理乃さん」
「なに、碧生くん」
「ぎゅってして、いい?」
「……」
「ぎゅってする」
「えっ、わっ、」
「理乃さん不足なの。だから、今は、お願い。このままぎゅってさせて」
マンションの廊下でなにしてんだ、私たちは。