FUZZY






この時間に廊下に出ている人がほとんどいないとはいえ、さすがにこんな所で男女が抱き合う(抵抗できないぐらいがっちり抱きしめられている)のは良くない。

だから、家に入ってもらうことに。





「……お邪魔、します」

「どうぞ」


ゴソゴソとヒールを脱いでいたら後ろから覆い被さるように抱きしめられてしまった。またもや身動きが取れない。


「碧生くん、ちょっと重たい、かも」

「……っ、わざとだよ。理乃さんが俺から離れていかないようにわざと重たくしてる」


つまり、重しになってるってこと?紙が飛んでいかないように石を置く、みたいな。発想がかわいい。……いや、かわいいとか何?流されちゃだめなんですけど。

こんなことをただのセフレに言えちゃうんだもんな、碧生くんは。あの子にも言ってるのかな。これまでの数々の甘いセリフたちを。だとしたら本気でしんどいや。


いいから早く入って、と少し強めに言い放つ。

あー…胸がチクチクする。

本当はこんな言い方したくないよ。でもね、私だってどうしていいかわからないの。突き放せばいいのに、できないから苦しいの。


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