FUZZY
アルコールは無駄に自分をポジティブにさせるクスリみたいなものだから今なら碧生くんの言う〝かわいい〟に自信が持てる気がする。
だって、隣のサラリーマン二人から「お姉さんかわいいですね」って話しかけられて浮かれちゃってるんだもん。
「俺らと一緒に飲みません?俺ェ、ついこの間彼女に振られちゃって。お姉さんに慰めてほしいなーって思ってたんっすよぉ」
けらけら、と笑って有無を言わさず私のジョッキに自分のジョッキをぶつけてくる。勝手に乾杯されてしまった。
「私で慰められるかな」
「もう隣にいてくれるだけでいいっす!大満足っす!あはは」
酔いすぎだろ…。
振られて悲しいからこんなに酔ってるの?お酒で全て流してしまおう的な?お酒に逃げるパターンってわけね。まあ、気持ち、わからないこともないな…。
「あ、でも、強いていうならば〜ちょっとだけ抱きしめさせてほしいかなーっつって!」
「え」
「俺にぬくもりください!ぎゅぎゅっと!」
「いや、それはちょっと」
「いいじゃないっすか〜これも何かの縁!俺とお姉さんが今抱き合ったら何かが変わるかもしれないっすよ?恋に発展するかもだしぃ」
ううん、ない、それはありえない。私、別にあなたと恋したいとか思ってないし。
迫り来る酔っ払いの失恋リーマン。
端っこの壁、邪魔だ!くっそう!
首をふるふる振って顔を逸らしたその時、ふわっとシトラスの香りと共に、
「はーい、ストップ」
ヒーローが現れた。