FUZZY
「お姉さん困ってるじゃないですか。ナンパならスポット行って下さい。それとも出禁にしましょうか?」
「うう、アオくん。そんなに怒らないでくれよ〜。おじさんね、失恋して、」
「あーはいはい。水飲んで今日は帰りましょうね。泉田さん、お会計お願いしまーす」
お店の奥からお兄さんが出てきて伝票をレジへと持って行った。失恋リーマンは一緒に来ていたお友達に腰を支えられレジに向かう。それを私はぼおっと見ていた。
シトラスの香りが大渋滞。すぅーっと鼻で吸って今日のわんこの匂いを感じる。
さっきまでいなかったのに、なんで?ピンチの時にヒーローが来るって小学生の頃に観た戦隊モノでしかありえないと思っていたのに。しかもしっかりと赤色ポジションなんだよなぁ。
わんこのくせに。
「ごめんね。あの人、常連さんでいい人なんだけど今日は派手に酔ってるみたい」
「……彼女に振られたって言ってた」
「失恋がどうこう言ってたね。そっか、振られたんだ。それは可哀想だなぁ」
空になったジョッキを二つ、目の前の段差に置いてテーブルを拭いていく。手際がいい。ここでバイトしてどれくらい経つのだろう。月に入る回数とか。
……はっ、あぶない、あぶない。
危うくストーカーになるところだった。