FUZZY



「奥にあったか?なんだっけな、レポート?」

「はい。更衣室のテーブルに置きっぱなしにしてたみたいです。無くしたかと思ってひやひやだったから見つかってよかった〜」

「片付けありがとうな。気ぃつけて帰れよ〜」

「はーい」


用があったついでに片付けしちゃうとかどんだけ気がきくの?いい子すぎるでしょう。それだけでお酒が進む。もう一杯生を注文しよう。

の、はずだったんだけど。












「うぅ、夜はさむいね。あ、理乃さん、パーカー貸すから着なよ」

「え、いいよ!これあるし大丈夫」


羽織っているカーディガンを見せる。

けれど「風邪ひいちゃだめでしょ」と半ば無理やりグレーのパーカーを着せられてしまった。いや、とってもありがたいんだけどね。それだと逆に碧生くんがさむくないのかなって。

あのあと、一杯飲むはずだったのに、碧生くんに「一緒に帰ろ。送る」って言われてしまって飲みたい気持ちと彼の隣にいたい気持ちとが混ざり合って結局今なんだよね。隣にいたいってなんだよ、乙女かよ…。

ま、まぁ、あれだ。ひさしぶりに会ったんだから一ヶ月分の溜まった話とかさ、聞けたらいいなーって。……私、話すことないけど。この一ヶ月、謎に碧生くんのことを考えていたなんて口が裂けても言えないけど。


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