FUZZY





しばらく無言が続いて、その間にちらちらと彼の方を見ても視線に気づいてないのか一切こちらを見てくれない。

寂しいし、もどかしい。

隣にいるのに、碧生くんの匂いとぬくもりに包まれているはずなのに、ちょっと遠く感じちゃうのはなぜだろう。




「あ、碧生くん」


だから、思い切って名前を呼んでみた。

私よりも遥かに高い身長の持ち主なので少し見上げて黒目同士を重ねる。微かに揺れた碧生くんの瞳。あれ、なんだか、違和感。


「ん?どーしたの?」

「…元気?」

「え」

「いや、ちょっと様子が変だなーって。私の気のせいだったらごめん」

「あー、えっと、……我慢してる」

「……我慢?」

「理乃さんに触らないように我慢してんの」


えぇ…待って、かわいい、さすがにかわいすぎるってば。ひさしぶりに会ってこれは破壊力がえぐすぎませんか。わんこ、理性保つの巻ってやつ?

……そうか、なるほどね。

違和感の理由はこれだったのか。


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