FUZZY




どうしてこんなにも私の心を擽ってくるのだろうか。計算されているとは思えないからこそ余計にハマりそうになる。

そんなに気になるなら少しぐらい触ってもいいのに…って思っちゃう私は沼に片足、いや、両足突っ込みかけている。つま先でちょんちょんしてる感じ。


「がっつく男はモテないぞ!って友達に言われちゃったんだよね。別にモテなくてもいいけど理乃さんには嫌われたくないからさ、俺」


私にはって…。こちらは嫌いになるどころかかわいさと愛おしさが爆発していて困ってるんですけど?


「でもね、ちょっと限界きてる。理乃さんのことぎゅってしたい。パーカーが俺だったらいいのにって思っちゃうぐらいに、パーカーに嫉妬してる!はあ〜…ばかだよね、ほんと」


ほら、またそうやって無自覚に人の心を惑わすんだから困っちゃう。罪な男め。

星一つない紺色の空を見上げてため息をつく碧生くんの横顔は綺麗だ。ずっと眺めていたいしできることなら触れたい。両手で包み込んでそのままそのピンク色の唇に口づけをしたい。

あーあ、調子狂っちゃうな。せっかくこの関係をスパッと終わらせようとしていたのに。


「碧生くん。あのさ、これからうち来ない?」


ほんと、どうしようもない。

樋井先輩、あなたが教えてくれた、


〝表面だけ見ても答えが見つからないなら行動するしかないんじゃない?〟


を私は間違った気がしています。


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