FUZZY




出会いはよくありがちなやつだと思う。居酒屋に行ったとき、たまたま隣に座ってたのが理乃さんで、意気投合した俺たちは夜の街へ消えてった的な。朝起きたら一万円札だけ置かれていて理乃さんの姿はなかったけど。

一目惚れってありえないと思ってた。でも出会ってすぐに彼女の雰囲気とか顔とか体とか俺のツボを押さえてて、あ、気になる、もっと知りたいって思ったのは間違いない。

相手を知りたいと思い始めたら、それは恋のはじまりでしょ?(え、違うかな。どうなんだろ、……わかんないや)









「今日、なんで家に誘ってくれたの?」


酎ハイをぐびっと飲んでテーブルに置く。ちらっと理乃さんを見たらチーズを齧りながら「…な、なんとなく?」って首を傾げた。なんとなくで男を家に入れるか?普通。あぶなすぎ。


「だめだよ。俺みたいにいい子だけじゃないんだから」

「碧生くん、いい子?」

「うん、いい子。でも俺以外はケモノ、ガオーってされちゃうよ。だからなんとなくで男を家に入れちゃだめ。わかった?」

「う、うん」


素直でかわいい。

ここんとこレポートやらバイトやらでバタバタしていたからこうしてふたりで会えてほんとに嬉しかったんだ。まさかひとりで飲んでるなんて思わなかったしさ。

ひさしぶりの理乃さんは相変わらずかわいくてお酒を飲むとふにゃあってゆるくなる。

あー、キスしたいなー。


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