FUZZY





頬から後頭部にするっと手が回り、髪を巻き込みながらゆるい力で鷲掴みされる。完全に固定された状態で封じられた唇からは唾液が混ざり合う音が漏れる。


「ん、ふ…ぅ」


結構強引なキスだと思う。それでも嫌じゃないのは私が碧生くんを受け入れているから。

「っは、」と唇が離れて呼吸を整える。「勝手にご褒美もらっちゃった」と舌をぺろっと出す碧生くんにたじたじだ。


「理乃さんが足りない」

「…っ」

「もっと欲しい」

「う、うん」





「好きだよ」


不意打ちの〝好き〟に一気に顔が熱くなった。


私、好きって言葉をめちゃくちゃ久しぶりに人から聞いた気がする。私に向けて、私だけの好きを。だからどんな反応が正解かわからないしかわいくない返事かもしれないけど、


「…、わ、私も同じ気持ち、です、」


この気持ちに嘘はない。



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