若女将の見初められ婚

「先に食事しよか。食べられへんもんは何かある?」

「いえ。何でも食べれます」

「じゃあ、コース料理にしとこか」

テキパキと注文する姿は、頼りがいのある大人の男の人そのものだった。

そんな姿にぼーっと見惚れる。

慣れてはるんやなぁ。
私はこんなとこ滅多に来ないから、メニューを読むことすら難しい。
今だって、メインを魚にするということだけしか、決められなかった。


ちょっと気後れするけど、リードしてくれるのはありがたい。
9歳も年上の人やから、当たり前かもしれへんけど。


お昼からアルコールは止めとこうということで、ペリエで乾杯した。

何を話したらいいかわからなくて、そわそわするけど、しの君は私をにこやかな顔で見てるだけ。

「とりあえず話は食事の後で」

ありがたいことを言ってもらえたので、せっかくの美味しい料理を堪能させてもらうことにした。

「美味しいっ!」
思わず目を丸くする。

出てくる料理は何もかも美味しかった。フランス料理なんてあまり食べる機会がない。私は緊張感も薄れ、心から料理を楽しんだ。

「ええ顔して食べてくれて、ほんまに嬉しいな。志乃ちゃんは美味しいもん食べてる時の顔が一番可愛いな」

びっくりした。私が食べてるところなんて見たことある?
でも、食べてるところが誉めポイントって、女としてどうなんだか…

「食いしん坊で恥ずかしいです」

私はちょっと下を向いた。

「いやいや。誉めたんやから、恥ずかしがらんでいい。美味しそうに食べる女の子は好きやで」

また見つめられて、目のやり場に困る。あぁもう、頼むから私じゃなくて、隣の観葉植物でも見ててほしい。

今までにこんな甘い言葉を吐く男の人に遭遇したことがなく、どうすればよいか全くわからなかった。

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