LOVEPAIN⑥
その、撮影当日。


成瀬から言われたように、朝の8時にマンションの下へと降りると。


そこに停まっているのは、成瀬のアルファロメオではなくて。


会社の車だという、黒いベンツ。


そのベンツの運転席に座っていた篤は、
私の姿を見て、ベンツから降りて来た。


「篤?
そういえば、今日新人のキカタンの子の付き添いだって。
ああ、その子もこのマンションに住んでるの?」


なので、篤は今日はいつもより早くに出社していた。


「いや。そっちは美濃さんが代わりに行く事になった」


「そう…」


無言で、篤と私は見つめ合う。


流石に、もう何故篤がここにいるのか分かってしまった。


「成瀬さんは?」


少し、声が荒くなってしまう。


「成瀬さん、朝から体調が悪いんだってよ。
会社には一応出社してっけど、流石にお前に付き添ったりは無理だって。
だから、今日は俺に代わりに」


嘘だ…。

直感的に、そう思う。


成瀬は体調の悪い振りをして、私の同行を篤に任せた。


私と篤が付き合っている事を知ってAVの撮影を見せるなんて、何故?


監督面接の時に会った成瀬は、
私と篤の関係を祝福してくれているように感じたのに。


今さら、私に対して執着しているとも思えないし。


ただの、嫌がらせなのだろうか?



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