空の色

大きな木

さっき、トイレに行ってから心電図モニターを外したままなことに気がついた。

看護師さんが忙しくて忘れているのだろう...

いつもなら心電図が外れたら速攻で看護師さんが飛んでくるのだが、今はOFF。。。

私の中でふと散歩でもするかと思った。これは、先生、病院関係者を試すための定期的にやりたくなる衝動である。

まぁ、とりあえず点滴はつけておくか…

ドアを少し開けて、ナースステーションを確認。案の定看護師さん達は忙しそう…

これは余裕で中庭に行けるな…と思い、さっさとエレベーターに乗り、1階まで降りた。

その間に私のバンドの赤い方を黄色いバンドの下に隠して...これをしないと、赤いバンドが目立ちすぎて、すぐに別の科の先生や看護師さんに見つかってしまうからだ。

ここまで、知ってる医者にも看護師にも会わず、こんなにスムーズに外まで来れただけで奇跡だった。

少し息切れし始めたが、ゆっくり歩いて、中庭の大きな木の下のベンチに来た。
ここは思い出の場所。。。何度も逃げ出してここに来た。まぁ、今回も速攻で瀬野先生がすぐに見つけてくるとは思うけど、、、と思ったら、スマホが鳴った。瀬野先生からだった。

なみ「もう気づいちゃったか。。。早いなー」
と言いながら電話には出ず、ベンチに横になった。

なみ「ふぅー。気持ちいい...」
久々の日光に当たり、風で揺れる葉っぱの音。静かに目を瞑った。

そこへ、、、、

「やっぱり、、、ここか」

瀬野先生の声がしてゆっくり目を開ける。

なみ「早いね...」

瀬野先生「ったく、散歩行きたくなったら言えって、今日は多分行かせなかったと思うけど、明日とか明後日とか、、、いくらでも調整できたのに、、、、お願いだから1人では行かないで。。。本当に...心臓止まりそうなくらい焦った、、、、」

起き上がった私の頬を大きな手で包み込んだ。瀬野先生の目が少し赤かった。

その時、私の記憶の中で全く同じことした人が蘇った。。。

あれ?誰だ。。。瀬野先生じゃない誰か、、、

誰だっけ?私がもっと小さい時、、、
全く思い出せなかった。


瀬野先生「なみ!なみ!!はい早く座って、病室戻るぞ!!息切らしてるじゃん!!」

なみ「あ、、、うん。」
私は車椅子に腰掛けた。

病室に着くと、何やら追加の点滴やら、注射やら酸素マスクまでつけられた。

なみ「私まだ、大丈夫だよ、、?」

瀬野先生「はあ?サチレーション低すぎなんだよ。気づいてないの??酸素マスクはいいって言うまで外すなよ?」
今気づいたが、瀬野先生は結構怒ってた…

私はコクンと頷いた。
多分瀬野先生が、眠くなる薬も入れたんだと気づいた。だんだん瞼が重くなってきた。

まだ瀬野先生の声が聞こえるけど、、、だんだん聞こえなくなってきた。
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