婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 みなの前では、やはり気丈に振る舞っていたのだろう。ふたりきりになったら、途端にレナートの容態は悪化しはじめた。
 どんどん熱があがり、呼吸は浅く速くなっていく。いくらぬぐっても、額から流れる汗が止まらない。

「頑張ってください。苦しいと思いますが、少しお水を」

 オディーリアは布に含ませた水を彼の口元に垂らしてやった。

「あぁ、悪いな」
「喋らなくて、大丈夫ですから」

 血の気のひいた顔色を見ていると、不安でたまらなくなる。
 もしも、このまま……。考えたくもないことなのに、つい想像してしまう。
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