ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「松田君のご両親は何してるの?」

「俺、施設育ちなんです、詳しくは知らないんだけど母親は俺を産んだ後失踪したとかで、誠とも施設で知り合ったんですよ」

 ドカンと大砲で撃たれたかのような衝撃の一言になんて返事を返したらいいのか分からなかった。
 大変だったねって言うのがいいのか、でも施設育ちだから大変とは限らない訳であって、安易に大変だったね、辛かったね、と言うのはなんか違う気がした。それでもなんて松田に声をかけるのが正解なのかパッと浮かばず言葉が出なかった。
 笑って誤魔化して話してくれているように私には見えて、思わず何も言わずに松田の事が愛おしくて抱きしめていた。

「真紀……?」

「えぇっ、あ、ごめん! つい、なんとなく……」

 パッと両手を離しアルバムに視線を戻す。

「施設育ちって言ったから心配してくれました?」

 図星だ。
 でも心配とはまたちょっと違うような。
ただ松田の事が愛おしい、と思っただけだった。

「心配って言うか、何というか、無性に抱きしめたくなったと言うか……」

「なにそれ、嬉しすぎるじゃないですか。でもまぁ施設って言ってもそれなりに普通に過ごしてきましたから大丈夫ですよ」

「そうなんだ……じゃあ誠……君? ちゃん? とは家族同然なんだね」

「ですね、ずっと一緒でしたから」

「この前急に帰って失礼な態度とっちゃったから今度会えたらお詫びしないとな……」

「気にしなくていいですよ、それにこれからは真紀がずっと一緒にいてくれるんですよね?」

 ジッと見つめる松田の目が私を捉えて目を逸らす事が出来ない。急に真剣な空気が張り詰める。タイミングが良いのか悪いのか、DVDも終わってしまい一気に部屋が静かになる。
 「もちろん」たったこの一言が素直に口から出てこない。心の中では思っているのに、勿論ずっと一緒だよ、そう思っているのに恥ずかしいと思う気持ちが未だに勝ってしまい言い出せない。
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