戀を手向ける


イヤガラセかと思うほどの付きまとい行為は一切なくなり自由にサボれるようになった頃、藤宮守寿と同じクラスになった。

口煩いくせに人気者。男女問わず、生徒だけでなく教師たちからも好かれ、まわりに人がいない時間なんてない元気な姿は、正直おもしろくなかった。


好きなものなんて、今まで考えたことない。

ハンバーグに何がかかってようがべつにこだわりもない。


俺のことを知りたいと言ったくせに、あれ以来、あの毎日の迷惑行為がうそだったみたいで。身勝手すぎだろ。

そりゃ俺もらしくないことを言ったなって自分でも後悔してる、けど、やっぱり腹が立っていた。


振り回された、なんて被害者ぶりたい気分だ。

もう二度と関わらない、と子供じみたふてくされかたをしていた。



その朝はいつも通り明るく笑っていた。

英語の授業は担当教師のキャラクターもあって参加型。


いつもの藤宮守寿だったらクラスメイトと一緒になって英文をつくったり発言をするのに、ひと言も発さない。ずっと俯いている。

様子がおかしいとは思っていた。ふたつ隣の席からなんとなく、本当になんとなく気にかけていると、その身体はぐらりと横に傾き出す。


「おい…っ」


居眠り?何?よくわからない。

荒く席を立って彼女が倒れる前に身体を受ける。


「藤宮、藤宮守寿っ」


どうしたんだよ。

青白い顔。咳ごみながら乱れた呼吸。汗で張り付いた前髪。突然のことに教室中がパニックになっていた。


英語教師が保険医を呼んで、様子を見に来た保険医が救急車を呼ぶ。何が起こっているのか、彼女が救急車に乗り込む姿を見てもよくわからないままだった。

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