戀を手向ける


保険医から呼び出されたのはその5日後。

未だ教室に戻らない藤宮守寿のことは、胃腸炎ってことになっている。あんなん胃腸炎なわけねえよ。


「藤宮さんがお見舞いに来てほしいんだって」

「…は?」


人のこと避けといてなんなんだよ。

さすがに調子が良すぎるだろって、八つ当たりするように地面を蹴りながら、地元で一番でかい大学病院に向かう。


どこに行けばいいか迷っていると「すごい色の頭ねえ」と言いながら看護師か何かが受付のやりかたや病室への行きかたを教えてくれた。変なキャラクターのキーホルダーが受付済みの印らしく、制服のボタンに引っ掛けられるかたちでつけられた。すげー恥ずかしい。

あいつの名前があることを確認した。ひとり部屋らしい。無言で開けて中に入ると彼女は丸い目をいっそう丸くした。



「おまえが来いっつったんじゃねえかよ」


何びっくりしてんの、こいつ。あまりにものん気な顔をするから苛立ちが薄れていく。これ、もう藤宮守寿の魔術だと思う。


「だって…避けたこと、おこってると思ってたから……」


なんつう声だよ。
弱々しく、震えている。


「べつに、どーでもいいよ」

「…ありがとう」

「うん」

「直矢、くん」

「なに」

「……直矢くん、来てくれて、すごくうれしい」


それならいつもみたいに笑えばいいのに丸い目から何粒も涙がすべり落ちる。

鼻水も出てる。ティッシュを押し付けると色気もなくかみはじめたから、らしくなくてもちゃんと藤宮守寿だなって思った。

< 15 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop