十六夜月と美しい青色
 翌朝、窓から差し込む光が薄暗く、ベッドから出た結花がカーテンを大きく開けると深々と冷え込んで雪が積もりだしていた。

 ベッドに腰を掛け、寝ていた和人を起こす。ここから藤沢茶舗まではさほど遠くはないが、モールまでとなると電車を使って行かないといけない。この雪で車も、電車も混むことは簡単に予想できた。

 「和人、着替えに帰るならそろそろ起きないと、タクシーもこの様子だと呼んでもすぐには来ないかも」

 「ん…、予備のスーツは会社に置いてるから、今日だけならごまかせるだろ」

 気怠そうに返事をする。微睡みながら、結花をベッドへと引き入れた。

 「それより、もう少しこうして居たい…」

 結花を抱き寄せながら、しっとりとした素肌の柔らかな双丘に顔をうずめる。結花も、和人の髪を梳くように指を絡ませながら額に口づけをしていた。

 昨夜、夕飯を済ませてソファーで寛ぎながら、結花は帰りに凌駕に出くわした事を話した。折角のプレゼントも、落として包装が汚れてしまったことを。怒ったり非難することなく、和人は静かに聞いてくれた。

 「よく頑張ったな…」

 結花はその一言で、あの時あふれた涙の意味が分かった気がした。凌駕に未練があったのではなく、嫌悪しか感じなかったんだということに。

 想いあって初めて肌を合わせて、あの夜に感じた官能だけとは違う幸福感に充たされた夜だった。

 「約束、今夜だよね。何時ごろになりそう?どこかで待ち合わせをする?」

 「7時頃に結花の実家に迎えに行くよ。藤沢社長に、結婚の承諾をきちんと頂くためにも、改めて挨拶もさせて欲しい。出来れば、お正月にはうちの実家で一緒に過ごしてほしいんだ。その辺のことも、話しておきたいから」

 「ありがとう。父には、私からも話しておくわ」

 「それで、出来れば年内には一緒に暮らし始めないか?昨夜みたいなことが、もうないとは限らないし、何かあったら俺が自分を許せなくなる。それに、もう独りの部屋へ帰りたくない…」

 結花をベッドに縫い付け、啄むように唇を食む。切なそうな目で見つめられると、結花は頷くしかできなかった。

 

 


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