十六夜月と美しい青色
 「おはよう」

 いつもより寒い朝だからか、なかなかベッドから出ようとしなかった和人も、朝ごはんができるころには起きてきた。

 結花が振り返ってみると、目覚めた時の寝ぐせもきれいにセットされて、昨日と同じスリーピースのスーツを着込んだ仕事モードの和人が出来上がっていた。

 「おはよう。本当は、今夜渡そうと思っていたんだけど、昨日と同じネクタイよりはいいでしょ?」

 スーツは会社で着替えるからと言う和人のネクタイを解いた。シュッと音を立ててワイシャツの襟から外れると、そこにプレゼントにと用意していたネクタイを掛けた。

 「ああ、ありがとう」

 和人がそのネクタイを手早く結ぶと、深いブルーとグレーの色合いが和人の胸元を引き締めて、いっそう艶っぽさを引き立てているようで、結花はまじまじと和人を見ながら頬を赤くしていた。

 「よく似合っていてよかったわ。来年は、ちゃんとプレゼントを用意するから今年はこれで我慢してね」

 間に合わせのように慌てて準備したプレゼントでも、結花は自分の見立てが外れていなかったことが嬉しくて、思わず和人の頬に軽くキスをしていた。

 「毎年、クリスマスには二人でお祝いが出来ればそれでいいよ。そのうち、家族も増えるだろうしさ。結花が居てくれればそれだけで十分だよ」

 そんな結花の腰に手を回して甘い視線で結花を絡めとると、顎を引き寄せて唇を重ねた。

 何度も唇を重ねていた音が、テレビの時刻を知らせる音にかき消されると、和人は諦めたように唇を離し結花を抱きしめた。

 「早く、俺の名を名乗って欲しいよ。俺の物だって証明して、誰にも触れさせたくない…」

 クリスマスの朝の、甘やかな秘め事のような時間が過ぎていく。

 そして、過ぎていく時間に追われるように、一人でテレビのニュース番組を時計代わりにして簡単に済ませる朝食も、二人分準備するだけでなんだか嬉しくて、結花にはテレビの中でニュースを伝えているアナウンサーの声なんて聞こえてこなかった。

 
< 34 / 46 >

この作品をシェア

pagetop