十六夜月と美しい青色
今朝は、雪のせいで通勤に時間がかかるだろうと予測して、念のために早めに出勤する結花と一緒に和人もマンションを出た。結花は、駅に向かういつもより多い人波に紛れていく和人を見送って、自分の車を運転して来た。在来線を使って、フィットモールの最寄り駅から徒歩での通勤の和人はそろそろ職場に着く頃だろうか。
今年初めての積雪は、多くはないにしろ、かろうじてホワイトクリスマスを演出できる程度には降っていた。
事務所に着いて、いつものようにコーヒーを淹れていると、普段なら整然としている柊吾のデスクが、書類が山になっているのが目についた。
年の瀬が近づいてきて、事務仕事も溜まっていると言っていたから昨夜は遅くまで残業したのかもしれない。あの様子だと、今朝も早くから仕事をしているようで疲れた顔をしていた。
「今日は、デート?」
デスクの書類を脇によけて、甘いコーヒーを置いた。
「ああ。クリスマスなんだぞ、仕事にデートの邪魔をされてたまるか。さっさと済ませて今日は帰る」
少し、頬を赤らめた。彼女と久しぶりに会えるのが、待ちきれないくらい楽しみなのが雰囲気から伝わってくる。柊吾のような目の下にクマのある三十路の男でも、愛があって照れると可愛いものだと、結花はおもわず微笑んでいた。
結花は、柊吾に向き合うように近くにあった椅子を寄せてきて座った。ねえ、と改めて声をかけて以前から気になっていたことを話し始めた。
「この間カフェに応援に入った時に、柳田さんが新しい取引先を探すって言ってたでしょ。あれ、思い切ってカフェのメニューとかも含めて見直してみない?」
どういうことだと、手を止めて結花に尋ねてきた。
「あのカフェも、オープンして3年経つし、その間メニューもそのままだったでしょ。お茶のセットにしていた和菓子だけは、紅梅屋さんに色々と季節を感じる物を入れてもらっていたからマンネリ化した感じはなかったけど、仕入れ先を変えるとなると、そうはいかないでしょ?なかなかあのクオリティで、季節感のある和菓子を仕入れるのは難しいだろうし、フィットモール自体の中心客層の若い人たちを惹きつけるのに、ラテアートとかカフェっぽいメニューを増やしていくのはどうなのかしら?」
結花は手に持っていたコーヒーカップを、両手で包み込むように持って口を着けていた。温かいものを口にすると、気持ちがほっとする。
「そうだな、今までも考えなかったわけじゃないが…、あまり甘味処としてのイメージをガラリと変えてしまうのは気がすすまないが…」
柊吾は腕組みをしながら、唸る様に考え込んでいた。紅梅屋以上の和菓子を、細かい気づかいをもって作れる店など、どれだけ探しても見つからなかった。結花もそれには気づいて、この話をしてきたことは柊吾もわかっていた。
あんなことが無ければ、紅梅屋を切ることなんて考えなかったわけで、そこに結花も責任を感じていた。何もかも、父や兄に任せてしまっている事を結花なりに考えての事だった。
しかし、柊吾や柳田がなかなか次の取引先が見つからないのも、結花の言う通り、紅梅屋が老舗として地元で長く愛されてきたクオリティの高さが理由の一つだった。
「近いうちに、柳田に相談してみるか」
「ありがとう。私も、もう少し具体的に考えておくわ」
柊吾が、甘いコーヒーを口に運んで、机の上の書類に目をやって溜息をついた。
今年初めての積雪は、多くはないにしろ、かろうじてホワイトクリスマスを演出できる程度には降っていた。
事務所に着いて、いつものようにコーヒーを淹れていると、普段なら整然としている柊吾のデスクが、書類が山になっているのが目についた。
年の瀬が近づいてきて、事務仕事も溜まっていると言っていたから昨夜は遅くまで残業したのかもしれない。あの様子だと、今朝も早くから仕事をしているようで疲れた顔をしていた。
「今日は、デート?」
デスクの書類を脇によけて、甘いコーヒーを置いた。
「ああ。クリスマスなんだぞ、仕事にデートの邪魔をされてたまるか。さっさと済ませて今日は帰る」
少し、頬を赤らめた。彼女と久しぶりに会えるのが、待ちきれないくらい楽しみなのが雰囲気から伝わってくる。柊吾のような目の下にクマのある三十路の男でも、愛があって照れると可愛いものだと、結花はおもわず微笑んでいた。
結花は、柊吾に向き合うように近くにあった椅子を寄せてきて座った。ねえ、と改めて声をかけて以前から気になっていたことを話し始めた。
「この間カフェに応援に入った時に、柳田さんが新しい取引先を探すって言ってたでしょ。あれ、思い切ってカフェのメニューとかも含めて見直してみない?」
どういうことだと、手を止めて結花に尋ねてきた。
「あのカフェも、オープンして3年経つし、その間メニューもそのままだったでしょ。お茶のセットにしていた和菓子だけは、紅梅屋さんに色々と季節を感じる物を入れてもらっていたからマンネリ化した感じはなかったけど、仕入れ先を変えるとなると、そうはいかないでしょ?なかなかあのクオリティで、季節感のある和菓子を仕入れるのは難しいだろうし、フィットモール自体の中心客層の若い人たちを惹きつけるのに、ラテアートとかカフェっぽいメニューを増やしていくのはどうなのかしら?」
結花は手に持っていたコーヒーカップを、両手で包み込むように持って口を着けていた。温かいものを口にすると、気持ちがほっとする。
「そうだな、今までも考えなかったわけじゃないが…、あまり甘味処としてのイメージをガラリと変えてしまうのは気がすすまないが…」
柊吾は腕組みをしながら、唸る様に考え込んでいた。紅梅屋以上の和菓子を、細かい気づかいをもって作れる店など、どれだけ探しても見つからなかった。結花もそれには気づいて、この話をしてきたことは柊吾もわかっていた。
あんなことが無ければ、紅梅屋を切ることなんて考えなかったわけで、そこに結花も責任を感じていた。何もかも、父や兄に任せてしまっている事を結花なりに考えての事だった。
しかし、柊吾や柳田がなかなか次の取引先が見つからないのも、結花の言う通り、紅梅屋が老舗として地元で長く愛されてきたクオリティの高さが理由の一つだった。
「近いうちに、柳田に相談してみるか」
「ありがとう。私も、もう少し具体的に考えておくわ」
柊吾が、甘いコーヒーを口に運んで、机の上の書類に目をやって溜息をついた。