十六夜月と美しい青色
 「昨夜、結花が仕事の帰りに凌駕に声を掛けられたらしい。何もなかったみたいなんだけど、結花にはちゃんと本当のことを言っておいた方が良いんじゃないか。知らなくて済むならと俺も思ってたけど、いつかは耳に入ることなら親父から話しておいた方が良いと思って連れてきた」

 畳みかけるように話す柊吾は、幾分か苛立っているようだった。父もその理由が分かっているのか、なにも柊吾には言わず腕を組んで深くため息をついていた。

 「ふむ…、そうか…。結花には、接触はしないでくれとあれほど言っておいたのに」

 結花の父は、決して苛立っているわけではなかったが、少し張詰めたような雰囲気になり、柊吾と目配せをしながら言葉を選び、娘を傷つけない様にと苦慮していた。

 「いま、梅崎君とはどうなんだ?」

 伏目がちに、言葉を選びながら話しかけてきた父の問いかけに、結花は、思いもしなかったことを聞かれ焦ったように返事をした。

 「順調よ。そう言えば、今夜、食事に行く約束をしてるけど、ここに迎えに来た時にお父さんに挨拶がしたいって言ってたわ。この縁談を進めて欲しい事と、凌駕のことがあるから心配して、一緒に暮らそうって言われてるの。だからお父さんにも了解を貰いたいって」

 「お前たちが上手くいっているなら、安心だな」
 
 父の安堵したような表情も直ぐに消え、険しい顔をして話し始めた。

 「今から言うことは、お前にとって気持ちのいい事ばかりじゃないはずだ。聞かなければよかったと思うかもしれないが、それでもいいか?」

 父親のその様子が、結花の不安を煽る。

 「実際に儂も、柊吾と二人でその話を弁護士から聞いたときは、お前に言って良いものかと考えあぐねたよ。柊吾も言ったように、知らなくてもいいこともあるからな。そして和人君も、これは知らない事だ」

 「なにがあったの…?」

 傍に座っている柊吾も、顔を曇らせていた。それでも、父は結花の問いかけに少しずつ話し始めた。
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