十六夜月と美しい青色
「そんな状況なのに、わざわざ苦労するのが分かっていて嫁に出すわけにはいかんからな。仮に許したとして、京都へ一緒に行くのなら、いまの生活が全て壊れてしまうよ。彼は見習いとして行くんだ、一人前の給料が出るわけではないし、お前も知らない土地で新しい生活を始めなければ行けない。それは、婚約していたときに思い描いていた未来とは程遠いものだ」
再び、父が大きなため息をつく。娘が、時間をかけて愛情をはぐくんだ相手だということを分かっているからこそ、この事実がどれだけ結花の心を傷つけるか理解していた。そして、この事実を知ったならば、和人の存在が結花にとって足枷になり得る可能性も分かっていて話していた。
「それに私たちにしてみれば、梅崎君との結婚は、結花がやっと見つけた新しい人生だ。凌駕君のことを耳に入れて娘が幸せになろうとするのを、止めたくはなかったんだ。親のエゴだと言われても構わないよ」
結花は、震える声で父に尋ねた。
「和人との見合いの話をしてきたときには、凌駕のことは分かっていて、敢えて見合いの話を進めようとしたの?だから、お母さんは断ってもいいってしつこく言ってたわけ?もしかして、凌駕と別れなくても良かったの…?」
そして、縋るように父の眼を見る。
「それは違う。あの時はそれが最善だと凌駕君は判断して、苦渋の決断をしたんだ。確かに、結花とちゃんと話してからでも遅くはなかったとは思うが、彼の決断を否定してはいけないよ」
「でも…」
「じゃあ、いま梅崎さんとのお付き合いは、いい加減なものなのか。その気もないのに、縁談を進めようとしているのか?」
温和な声なのに、問い詰める父の視線が一層厳しさを増していた。
「違うわ…」
一瞬、怯んでしまいそうになるのを耐えてやっとの思いで結花は返事をした。
「凌駕君は、それでも最後には自分の責任を取って、お前との事を終わらせたんだ。結花も、自分の行動にはしっかり責任を持ちなさい」
再び、父が大きなため息をつく。娘が、時間をかけて愛情をはぐくんだ相手だということを分かっているからこそ、この事実がどれだけ結花の心を傷つけるか理解していた。そして、この事実を知ったならば、和人の存在が結花にとって足枷になり得る可能性も分かっていて話していた。
「それに私たちにしてみれば、梅崎君との結婚は、結花がやっと見つけた新しい人生だ。凌駕君のことを耳に入れて娘が幸せになろうとするのを、止めたくはなかったんだ。親のエゴだと言われても構わないよ」
結花は、震える声で父に尋ねた。
「和人との見合いの話をしてきたときには、凌駕のことは分かっていて、敢えて見合いの話を進めようとしたの?だから、お母さんは断ってもいいってしつこく言ってたわけ?もしかして、凌駕と別れなくても良かったの…?」
そして、縋るように父の眼を見る。
「それは違う。あの時はそれが最善だと凌駕君は判断して、苦渋の決断をしたんだ。確かに、結花とちゃんと話してからでも遅くはなかったとは思うが、彼の決断を否定してはいけないよ」
「でも…」
「じゃあ、いま梅崎さんとのお付き合いは、いい加減なものなのか。その気もないのに、縁談を進めようとしているのか?」
温和な声なのに、問い詰める父の視線が一層厳しさを増していた。
「違うわ…」
一瞬、怯んでしまいそうになるのを耐えてやっとの思いで結花は返事をした。
「凌駕君は、それでも最後には自分の責任を取って、お前との事を終わらせたんだ。結花も、自分の行動にはしっかり責任を持ちなさい」