十六夜月と美しい青色
瞳からあふれる涙は、留まることを知らないように流れ落ちていく。柊吾が気遣うように渡したハンカチも、直ぐに色が変わるほど濡れてしまっていた。
「厳しいことを言うが、今回の破談の慰謝料はお前の口座に入ることになっている。それが現実だ。終わったことだとけじめをつけて、きちんと梅崎君との将来を考えるんだ。梅崎君のご両親には、正式にお返事をして話を進めるからな」
結花は、父に何も返事が出来なかった。今朝、和人との甘い時間に幸せを感じていたのに、凌駕のことを聞いてハリケーンに胸の内をごっそり持って行かれたような気分になった。
それが過ぎ去った後の、その凄まじい威力の痕を見せつけられるように、結花の心の中を荒らされて、”正しいもの”と思っていたものが何も残っていなかった。和人を愛おしく思い思われることも、本当は嘘なのではないか。勝手にそう信じていただけで、まだ、凌駕に未練がましく思う気持ちが心の奥底で蠢いていたのではないか…。
だから、凌駕の代わりに、和人を愛おしく想うように錯覚しただけなのではないか。
今なら、まだ凌駕を追いかければ元に戻れるかもしれない。以前、信じていた未来が手にできるかもしれない。結花の心の中を、凌駕との別れで傷ついた思いが形を変えて顔を出して、ありもしない未来を嘯いていた。
「やはり、言わない方が良かったか…。柊吾、母さんを呼んできてくれ。結花を家に連れて帰らせておくから、和人君に仕事の後に家の方へ来るように連絡しておいてくれるか。少し落ち着かないと、この様子だと仕事も手につかないだろう」
涙の止まらない娘の様子に、ショックの大きさが見て取れた。柊吾も、こうなることは分かって連れてきただけに、居た堪れなさを強く感じていた。
「わかった」
柊吾はそう返事をすると、店に出ていた母親に声をかけるとすぐさま事務所に戻って、スマフォを片手に和人の番号をコールして呼び出した。
「仕事中、悪いな。今から少し時間が取れないか?結花のことで話がある…」
柊吾の少し焦った声色に気づいたのか、和人もランチをしながらならなんとか時間が取れると言って通話を終わらせた。お互いに、予定外のことに時間を割くほど暇ではない。それでも、結花のこととなると話は別だ。
事務所の時計の針が、まだランチタイムには早い時間を指していたが、柊吾は机の上の事務仕事もそのままで、車のカギを持つと走って事務所を後にした。
「厳しいことを言うが、今回の破談の慰謝料はお前の口座に入ることになっている。それが現実だ。終わったことだとけじめをつけて、きちんと梅崎君との将来を考えるんだ。梅崎君のご両親には、正式にお返事をして話を進めるからな」
結花は、父に何も返事が出来なかった。今朝、和人との甘い時間に幸せを感じていたのに、凌駕のことを聞いてハリケーンに胸の内をごっそり持って行かれたような気分になった。
それが過ぎ去った後の、その凄まじい威力の痕を見せつけられるように、結花の心の中を荒らされて、”正しいもの”と思っていたものが何も残っていなかった。和人を愛おしく思い思われることも、本当は嘘なのではないか。勝手にそう信じていただけで、まだ、凌駕に未練がましく思う気持ちが心の奥底で蠢いていたのではないか…。
だから、凌駕の代わりに、和人を愛おしく想うように錯覚しただけなのではないか。
今なら、まだ凌駕を追いかければ元に戻れるかもしれない。以前、信じていた未来が手にできるかもしれない。結花の心の中を、凌駕との別れで傷ついた思いが形を変えて顔を出して、ありもしない未来を嘯いていた。
「やはり、言わない方が良かったか…。柊吾、母さんを呼んできてくれ。結花を家に連れて帰らせておくから、和人君に仕事の後に家の方へ来るように連絡しておいてくれるか。少し落ち着かないと、この様子だと仕事も手につかないだろう」
涙の止まらない娘の様子に、ショックの大きさが見て取れた。柊吾も、こうなることは分かって連れてきただけに、居た堪れなさを強く感じていた。
「わかった」
柊吾はそう返事をすると、店に出ていた母親に声をかけるとすぐさま事務所に戻って、スマフォを片手に和人の番号をコールして呼び出した。
「仕事中、悪いな。今から少し時間が取れないか?結花のことで話がある…」
柊吾の少し焦った声色に気づいたのか、和人もランチをしながらならなんとか時間が取れると言って通話を終わらせた。お互いに、予定外のことに時間を割くほど暇ではない。それでも、結花のこととなると話は別だ。
事務所の時計の針が、まだランチタイムには早い時間を指していたが、柊吾は机の上の事務仕事もそのままで、車のカギを持つと走って事務所を後にした。