ずっと好きだった。


 だって課長が……女子社員憧れの課長が私なんかを好きだったなんて、夢か何かだと思っても仕方ないよね。
 今、実際この場にいるのが夢みたいでふわふわしてしまう。

 お酒も飲んでいないのに、この高揚感は課長に告白されたから?
 ついさっきまで彼のことで泣いていたのに、私ってそんなに軽い女だったの?
 でもすごく喜んでいるのは私の本音。


「驚かせて、ごめん。だけど本当に、ずっと好きだった。――って、こんなこと聞いたら気まずいよな? 俺は駅前のネカフェにでも――」

「待ってください。あの……下心はまだありますか?」

「それはもちろん……って、言ってる意味わかってるか?」

「課長こそ、わかってますか? 私は課長を利用しようとしているんですよ?」

「――じゃあ、俺はそれを利用させてもらうよ」

「はぃっ――!?」


 急に抱き上げられてびっくりして課長に抱きつく。
 憧れのお姫様抱っこはちょっと怖い。
 それともこの気持ちはこれから起こることに対してかな。

 わからない。わからないから、とにかく課長に強く抱きつく。
 すべてを――この感情のすべてを忘れたい。そして安心がほしい。


「――本当にいいのか? やめるなら今のうちだぞ?」

「課長こそ後悔しませんか? 私が責任を取ってほしいと言ったらどうするんですか?」

「大歓迎だけど?」


 優しい課長の問いかけに、挑戦的に質問を返せば楽しそうな声で答えが返ってきた。
 どうしよう。
 本当に私は軽い女なのかもしれない。
 こんなに嬉しいなんて。こんなに気持ちいいなんて。


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