ずっと好きだった。


「苦しい?」

「……え?」

「もし罪悪感で苦しいなら、俺のせいにすればいい。俺がそそのかしたんだから俺が悪い。君を追い詰めたあいつが悪い。だから君は何も悪くない」

「苦しいんじゃありません。怖いんです。でもそれは今が幸せだからで、この幸せが終わることが怖いんです」

「じゃあ、安心しろ。終わらせないから」


 その言葉が何に対してなのかわからないくらいに一晩中情熱的に抱き合って、気付いたときにはお昼を回っていた。
 正確には夕方に近かったと思う。

 はっきりしないのは、それからまた抱き合って眠ってしまったから。
 さすがにお腹がすいて、はっきり目を覚ました頃にはもう夜になっていた。


「何か適当に作るよ。嫌いなものあるか?」

「いえ、特には……あの、私が作りましょうか? それとも食べに……というか、そろそろ私は――」

「ダメ。帰したくないから、外には出ない。というわけで、君は監禁されてるわけだ」

「監禁……」

「そう。だから、食事の支度は俺がする。君はただ座ってればいいよ」

「甘い監禁生活ですね」

「そう思ってくれるならやりがいがあるな」

「監禁にやりがい?」


 おかしくて、ふふって笑ったとき、テーブルに置いたままだったスマホが震えた。
 友達からかもしれない。ただの広告かもしれない。
 それなのになぜか彼からだとわかった。

 微妙な沈黙の中、スマホを手に取ってロック解除する。
 やっぱりメッセージは彼からだった。


 ―――今、どこにいるんだ? 拗ねてないで帰ってこいよ。


 思わず課長を見たけれど、冷蔵庫の中を見ながら何を作ろうかと考えているみたい。
 それから振り返って私を見て微笑む。


「ろくなもんがないから、やっぱり何か買ってくるよ」


 ああ、きっと課長は気付いているんだ。
 今、彼から連絡がきたことを。
 監禁するなんて言いながら、私に考える時間をくれようとしている。


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