ずっと好きだった。
「何だよ、お前! 帰ってくるのは明日じゃなかったのかよ!」
「あ、うん。早く帰れることになって……」
「それなら連絡くらいしろよ!」
「ごめん……」
いや、私なんで謝ってるの?
何してるの?
どうして私が部屋から飛び出しているの?
気がついたら荷物全部――彼へのお土産まで持っていた。
彼へのお土産はご飯のおかずになるもの。
そのセレクトが今さら笑える。
彼の浮気現場を見たショックよりも、自分のベッドを使われたことのほうがショックも大きくて、その意味にようやく気付いた。
ホント、疲れたな。
喉が渇いたからコンビニでお水でも買おうと入る。
とりあえずもう少し落ち着いたら、家に帰って――。
「あれ? 何してんだ?」
「……課長? あ、えっと、私……喉が渇いて……」
「家に何もなかったのか? それでもこんな遅い時間に一人で出歩くなよ。それにコンビニならもっと近くにもあっただろ?」
「そ、そうでしたっけ……?」
何も考えずに入ったコンビニは駅近くにあるお店だった。
いつの間にこんなところまで歩いてきていたんだろう。
課長の持ったカゴの中にはお弁当が入っていて、晩御飯は新幹線の中で食べたのになって、どうでもいいことを考えてしまってる。
「腹減ったんだよ……」
どうやら課長は私がじっとお弁当を見ていたことに気付いたみたいで、言い訳するように呟いた。
私にわざわざ説明する必要なんてないのに。
悪戯が見つかった子どものような課長が可愛くて、ふふって笑いが漏れる。
しまった。失礼だったよね。
「君は腹減ってないか?」
「え? いえ、私は大丈夫です」
「そうか。それならその水だけでいいんだな?」
「は、はい――え?」
課長は私の手に持ったペットボトルを取り上げるとカゴに入れて、さっさとレジへ向かう。
お会計を一緒にしてくれるらしいと気付いて、慌てて私は鞄の中の財布を探った。