ずっと好きだった。
「……ありがとうございました」
「おう。何飲む? 水は冷蔵庫に入れてるけど、他に酒もあるぞ? ビールに酎ハイ、安物のワインに何なら冷酒も」
「お水で大丈夫です」
「そうか」
課長はお弁当の容器をさっと洗って手を拭くと、冷蔵庫からさっき私が買ったペットボトルを出してくれた。
それからコップも渡されたけれど断る。
洗い物を出したくないし、もともとそんなにお行儀のいい人間じゃないから。
課長は「テレビでも見ていてくれ」と言って、バスルームに向かった。
一人になって身の置き場をなくしそうだったけれど、テレビをつけっぱなしにしてくれているからか、ソファに座ることにそれほど遠慮することはなかった。
これも気遣いかな。
課長は社内でもさり気なくフォローしてくれるんだよね。
たぶん男性陣は気付いていないけれど、女性はそういうの細かく気付いてしまうから。
モテるのも当たり前だ。
それに比べて彼は若い女子社員には優しいけど――いや、考えるのはやめよう。
そう思いながらも鞄の中からスマホを取り出してチェックしてしまう。
だけど着信もメッセージも何もなし。
せめて心配くらいしてよ。
「――ビールでも飲む?」
「え?」
「やけ酒。そういう顔してるから」
「わかりましたか……」
髪の毛が濡れたままの課長は色っぽくてドキリとする。
だけどすぐ現実を思い出して、どうにか「ははっ」て笑ったところまではよかった。
それなのにその後はもう耐えられなくて、涙が止まらなくなってしまった。
情けない。恥ずかしい。