恋人ごっこ幸福論
「今度はなに、」
「手のツボ…こんなこともあろうかと、なんか緊張とかに効くやつがあることを調べてたのでとりあえず食べて貰ってる間にやってみようかと」
「何見たんだか…てか片手取られたら食べにくくて困るんだけど」
「で、でも食べ終わるの待ってたら時間無いし…」
と、その時ふと今自分が橘先輩の右手を握りしめていることに気づく。
つい、無意識で手握っちゃった。自分より大きくて全体的に骨ばった彼の手を包み込んでいると思うと、ぶわっと全身の熱が上がる。
「あ…えっと、やっぱり、」
「え……なーんでお前が緊張してんの」
「だだだって!手も繋いだことないのにこんなに触っちゃったから恥ずかしくて!!」
「自分から勝手に触っといて急に何言ってんだ」
動揺していると、まだ握っていた右手が握り返されてびくっと肩が上がってしまう。
手、手、繋いでる。
さっきまでの空気から何故急にこんなことになったのかは自分でもさっぱりわからないけれど。目の前で弱っていたはずの彼の呆れ顔を見上げつつ恥ずかしくなってきた繋がれた手を外そうと抵抗する。
けど、がっしりと掴まれていて離せない。なんで、掴む理由なんてないじゃない。今それどころじゃないのに、ドキドキしてしまうから離すしかないのに。
ぶんぶんと腕を振ってみせるけど案の定外れそうにない。もう、なんで。と、その時ふふっと彼が肩を揺らして。