恋人ごっこ幸福論
「ふっ…はは、あははは、なんかばっかみてえ」
「何がですか!?」
「なにがって、…神山が緊張してるのみたら、なんか馬鹿だなあって」
「ば、馬鹿って!!ひどい」
事実かもしれないけれどそんなストレートに言うことないんじゃないか。
いくら私でもショックだ、と言い訳しようとしたとき。
「でも、そんな馬鹿見てたら気がちょっと楽になった」
「え…」
急にそんなことを言い出す彼を思わず注視してしまうと、ぱっと手が離される。
そして1つキャラメルを口に入れながら立ち上がった。
「そろそろ集合だから行こっかな」
「橘先輩!もう大丈夫なんですか」
「ん、なんか大丈夫な気する」
平然と、いつもの動じないテンションで返事をする彼の表情は確かになんだか吹っ切れているようで。
いつもの、橘先輩だ。今日ずっとしていた違和感などもうなかった。
「よ、よかった…」
馬鹿って笑われたのはちょっとショックだけど、逆に緊張が解けたのなら結果オーライ、なのかな。
「こっちこそ助かったわ。まさか馬鹿見てたら落ち着くとは思わなかったけど」
「馬鹿馬鹿言うのやめてください!」
すぐに意地悪言ってくるのもいつも通りだ、言われたいわけじゃないけど悪戯っぽく笑う姿を見ていたら、安心した。