恋人ごっこ幸福論





こんな時間が永遠に続けばいいのに、橘先輩も同じように思ってくれたらいいのに。そうなる日が今のままで来てくれるのかな。

そんなことを思いながら1つ1つ一緒に水槽を巡っていく。


子供の頃来た時は思わなかったけれど、水族館の館内って照明が薄暗くて結構ロマンチックな雰囲気なんだ。

さっきから館内にいるカップルらしき人達のスキンシップが多いのもそのせいなのかな。…この雰囲気でも私にはかなりハードル高いけれど。



「神山、こっち」

「どうかしたんですか……わあ!」



水槽を仲良く眺める他所のカップルから何かヒントを得ようとしていると、橘先輩が先の水槽を指差す。

指差す方へ視線を向ければ、2匹のシロイルカがいる水槽だった。



「か、可愛い~…シロイルカだ~」

「イルカショー相当喜んでたからコイツも好きだと思って」

「好きです!めちゃくちゃ大好き!!」

「そうだと思った」



私がシロイルカ好きだと思ってわざわざすぐに呼んでくれたんだ。

嬉しくて隣に並ぶ彼を見上げると、私の反応に満足そうに笑っていて、そんな姿にもついドキッとしてしまった。


橘先輩、今日私のことを沢山喜ばせようとしてくれてる。

私はずっとテンパってばかりなのにな、1人で余裕無くしてて恥ずかしい。





< 159 / 304 >

この作品をシェア

pagetop