恋人ごっこ幸福論
「まさかこの人が緋那ちゃんの知り合いだったなんてね…」
「どっからどう見ても別次元の人なのに…世の中分かんないわねえ」
「なんかごめんね、2人も巻き込んじゃって…」
玲央ちゃんのことを私の後ろから眺めながら、驚愕している2人にお騒がせしてしまって心苦しかった。
「てっきり玲央のことを君も覚えてるものだと思ってたから多少手荒な方法でも大丈夫だと思ってたんだ。俺からも謝らせてもらうよ、ごめんね」
「あ……いえ、というかどちら様、でしょうか」
朝から玲央ちゃんの隣に居る、同い年くらいの男性。
にこやかに笑う彼も整った顔立ちで、玲央ちゃんとは違って穏やかそうな雰囲気がする。
「あ、そっか。初めましてだよね。玲央の従兄の一ノ瀬 京也です。玲央と同じ2年で一緒に転校してきたんだ、こんな感じだから1人だと学校で不安だからさ」
「そうなんですね…宜しくお願いします」
玲央ちゃん1人だと不安だから、ってどういう状況なんだろう…と思ったのは忘れることにしよう。
「そういえば玲央ちゃんよく私のこと分かったよね。10年前だって数回しか会ったことなかったのに、すれ違った瞬間に私だって分かるなんて」
「そりゃ俺はずっとお前のことを思い続けてきたからな!中学の頃1回緋那の爺ちゃんに頼んで写真も貰ってたしな」
「思い続けてきたって…」
お祖父ちゃんが玲央ちゃんと連絡取ってたことも意外だが、ただでさえ少ない私の写真を彼に上げていることも初めて知った。
しかし、それよりも玲央ちゃんから向けられる視線が熱っぽいことが気にかかって、少し動揺する。
そんな訳ない、一瞬浮かんだ可能性に気づかない振りをしようとしたとき。