恋人ごっこ幸福論





「お前はいいわ」

「え、でも…」

「とにかく振り回されてんじゃねえよ馬鹿」

「わっ…」


もう一度、軽く怪我してない方の手で私にチョップするとそのまま橘先輩は部員の方に声をかける。


「とりあえず保健室行ってくる」

「おー行ってらー」

「!わ、私も行きます」


返事を聞き終わる前にさっさと体育館の入口へと向かう橘先輩の後を追いかける。


「…別に大した怪我じゃないしついてこなくていいんだけど」

「そうは言われても気になるので」


悪くない、と言ってくれているけれど私を庇って怪我したのは紛れもない事実。一緒に行くのが筋だろう。帰る時間はとっくに過ぎていたが、今日はそんなこと言っている場合でもない。


「じゃ、勝手にすればいいけど」

「はい。じゃあ勝手についていきます」


いちいち断るのも面倒だと思ったのか、投げやりになった彼の隣に並んで、保健室へと向かった。





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